すいかからがぼちゃの季節が到来した。しかし実だけ食べていたのではもったいない。 種も栄養満点なのだ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が食べ方を指南する。
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「食欲の秋」である。瓜で言うと、西瓜(すいか)の季節はそろそろ終了となり、南瓜(かぼちゃ)の季節がやってきた。余談だが「西瓜」と「南瓜」はあっても、「北瓜」と「東瓜」はない。冬瓜はあるが、名前とは裏腹にその旬は夏だ。
こうした「瓜の種」は食べることができる。製菓の材料としても使われるかぼちゃの種に象徴されるように、瓜の種は栄養価が高い。とりわけオメガ3脂肪酸という不飽和脂肪酸は、その効果・効能で話題の成分でもある。例えば「中性脂肪の値を下げる」「高血圧予防」「動脈硬化予防」「ダイエット」「花粉症」ほかさまざまな効果が期待される成分だ。オメガ3に加えて、肌や血管を健康に保つためのビタミンEも豊富なことから、アンチエイジングにもうってつけの食材だ。
このほかにもタンパク質の生成を助け、エネルギー代謝を促すマグネシウムや、腎臓や肝臓での代謝に寄与し、最近ではガン予防の効果も期待されるモリブデンなども豊富に含まれているという。
とはいえ、あのかたい種をそのまま食べるのは至難のワザだ。実際に栄養分が豊富なのは、硬い殻の内側にある種子の部分。殻から取り出す必要がある。
かぼちゃ、すいかなら、種をきれいに洗い、1~2日天日干しにかける。平らにならして、水分を飛ばすよう、電子レンジに複数回かけてもいい。その後、オーブントースターかフライパンで、種に焼き色がつき、いくつかの種がパチッとはじけるまで焼く。種を縦にして、前歯で外殻を割り、中身を取り出す。
文字にすると手間がかかりそうに見えるが、手順としては、干して焼くだけ。酒でも飲みながらカリカリとかじるように殻を外す作業も、没頭すればまた楽しい。
国内のスイカは種が小さく、種をそのまま食べるのは少々面倒――。という方には「西瓜糖」をおすすめしたい。スイカの果肉を種ごとフードプロセッサーにかけ、濾した果汁を煮詰めたものだ。すいか1玉から小瓶にひとつ分ほどしかできないが、種の栄養素も摂取できるばかりか、果肉の利尿作用や解熱などの効果も期待できるという。
ちなみに、冒頭に触れた西瓜や南瓜の名前の由来は、中国に入ってきたルートを指すとされる。西のウイグルのほうから中国に入ったのが「西瓜」で、南蛮渡来のかぼちゃが「南瓜」(中国における「南蛮」はインドシナ半島あたりを指す)。日本には16世紀にポルトガル経由で入ってきたと言われるが、そもそもの原産地のカンボジアがなまって「かぼちゃ」と呼ぶようになったという説が一般的だ。
去りゆくすいかを惜しむもよし、これから甘さが増すかぼちゃを楽しむもよし。まだ知らぬ楽しみに手をつけてみる。「蒔かぬ種は生えぬ」のだ。