環境問題はすぐに解決、とはいかないだけに対応・対策が難しい。中国に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏がレポートする。
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環境保護局長に泳いでもらいたい!
河川の汚染が深刻化する中国で、1人のネットユーザーの投じた一石が社会にムーブメントを巻き起こした。
9月7日の午前、浙江省で金華市副市長、蘭溪市党委員会書記、そして金華市など周辺の環境保護局の正副局長約15人がそろって蘭江(河)に飛び込むというパフォーマンスが行われたのだ。
環境保護に責任を負うトップらが顔をそろえて河に入ったのは、今年の年初(旧正月)間もなく冒頭の書き込みが話題を呼んだからだった。河川の汚染の深刻さに怒りを感じていた人々は次々とこの書き込みに呼応、ついに運動は、官僚自らこんなイベントを開催させるまでに広がっていったのである。
舞台となった浙江省は5月にも問題が起きたばかり。温州市蒼南県で、入水自殺をはかった14歳の少女を現地の警察官である張光聰(51)が助けたのだが、救出過程で河の水を飲んだ警官が少女よりも危険な状態に陥ってしまったのだった。医師によれば、「消化器系から呼吸器系にいたる問題で一時は危篤状態に陥った」といい、診断は「汚水遊泳後遺症」と発表された。このときもさすがに市民が怒り、「環境保護総局長をそのゴミ河に投げ込め!」と書き込みがネットにあふれたのだった。
こうした人々の怒りを背景に〝河で泳ぐ〟パフォーマンスがなされたのだが、その効果はあまり上がったとは言い難いようだ。というのも、蘭江が同地区が徹底して水質改善に取り組んだ〝モデル河川〟だったからだ。たちまちネットには、「地元にはあれほど多くの汚染された河があるのに、きれいな一本を選んで泳ぐことに意味があるのか?」、「局長よ、別の河で泳ぐ勇気はあるのか?」という書き込みであふれることとなった。
事実、汚水遊泳後遺症という聞いたこともない病名を点けられた警官が飛び込んだ温州市では、このニュースが伝えられた直後、メディアが市内の河川の状況について「市内では、すでに680本がこの警官が泳いだのと同じ程度の〝ゴミ河〟だ」と報じている。