韓国の裁判所が新日鉄住金など日本企業に戦時中の元徴用工への個別賠償を命じる判決を言い渡した。徴用工の賠償問題については、日韓両政府ともに1965年の「日韓請求権協定」で「完全」かつ「最終的」に解決されたとの立場で一致しているにもかかわらずだ。
常軌を逸した判断を下した韓国司法の事例は他にもある。長崎県対馬市の観音寺から盗まれた県指定有形文化財「観世音菩薩座像」などが韓国で発見されながら、いまだに日本に返還されていない。
本来の所有者だと主張する韓国・浮石寺が「菩薩座像は倭寇で掠奪されたものだ」などと訴え、大田地裁が3月、「観音寺が仏像を正当に取得したことが証明されるまで、韓国政府は日本側に返還してはならない」との判断を下したからだ。韓国の司法に危機感を募らせる堀内恭彦弁護士はこう話す。
「あきれてものがいえません。日本の裁判所がこのような判決を下すことは絶対にありえない。民法では『占有者が占有物について行使する権利は適法に有するものと推定される』と規定されています。つまり、その人の所有物ではないと主張する人は、その旨を立証しなければなりません。
すなわち『観音寺が仏像を正当に取得したことが立証されるまで韓国政府は日本に返還してはならない』のではなく『観音寺が仏像を不当に取得したことを浮石寺側が立証しなくてはならない』のです。立証責任は浮石寺側にあります。韓国の法制度は日本をお手本として構成されており、法理論に大きな違いがないのに、なぜこのような法の大原則を無視した司法判断が出るのか、理解に苦しみます」
韓国司法のデタラメぶりは1月の靖国神社放火犯の引き渡し拒否事件にも表われている。同神社に放火した疑いがあり、韓国で拘束されていた中国人容疑者の身柄を、日本側は「犯罪人引き渡し条約」に基づき引き渡すよう求めていたが、ソウル高裁は条約が送還の対象外となる政治犯と認定したのだ。
同高裁は「靖国神社に戦犯が合祀されており、放火容疑には政治的目的との関連性がある」などとしているが、中国政府は中国への送還を強く要求したとされ、韓国でも元慰安婦を支援する反日団体などが日本へ引き渡さないよう韓国政府に圧力をかけていたという。そうした中国や反日勢力の要求に司法が屈したとすれば、韓国はもはや無法国家である。
※SAPIO2013年10月号