国際情報

韓国新婚女性に「人権なしが9年間続く」を意味する言葉あり

 日本人女性もハマった韓流ドラマの甘い恋愛は、ある韓国人男性に言わせれば「女性に独身の間だけ見させる夢のようなもの」だという。韓国社会の男尊女卑の実態をフリーライターの張赫氏がレポートする。

 * * *
 韓国には儒教文化を建前にした因習が根強く残っている。目上に当たる親や年長者には決して逆らってはならない、妻は夫に絶対服従するといったものだ。結婚3年目の韓国人男性(30代)が語る。

「今でも“超“男尊女卑社会ですよ。チェサ(法事)なんかがいい例。韓国では3代前まで遡って行なう家が多く、法事は年に4~5回、多い家では7~8回ある。

 女性たちは台所で供え物や料理を準備してテーブルに並べます。男性が食べ終わるまで給仕し、同席は許されない。男性の食べ残しを洗い物をしながら台所の片隅で食べるんです」

 別の韓国人男性(20代)は法事の時に見たある光景を述懐する。
 
「10代の頃に法事に参加した時、長男を産んだばかりの親戚がいたのですが、20人くらいいる男性の前で乳房を出して授乳を始めた。というか、強引にさせられていましたね。韓国で長男は“宝物”とされ、そうするのが風習だというのですが、当時はまだ知らなかったので驚きました」

 ソウルで新婚生活を始めたばかりのイ・ヨンミさん(仮名)は「結婚してからが本当に大変……」とため息をつく。

「毎日一回は必ず姑さんに電話してその日にあった出来事を報告し、週末になれば決まって夫の実家で食事。準備はすべて私がやるんですよ。夫は『そうするのが当然』と言って味方になってくれません。付き合っている頃はデートのエスコートやサプライズで尽くしてくれたのに、結婚した途端に人が変わったみたい」

 さらにイさんが続ける。
 
「韓国では新婚女性の立場を表わすのに『見ざる3年、聞かざる3年、言わざる3年』と言います。人権なしの状態が9年間も続くという意味。大袈裟ではありません。ごく一般的な家庭がそうです」

 韓国では近年、「女性緊急電話(*注)」の利用者が増えており、今年6月発表の統計では家庭内暴力(DV)が全相談件数の42.6%を占める。結婚後に暴力を振るう男性がこれほど多いのは、女性の人権が蔑ろにされている証拠だ。

 企業にも女性蔑視がある。ある女子大生は助教授に就職の相談をしたところ、こんな言葉を投げかけられた。

「あなたは“サムスン型”の顔じゃないよ。これまで就職に成功した卒業生をたくさん見てきた。企業ごとに受ける顔があって、顔を見ればどの会社に向いているのかわかるものだよ」

 “サムスン型”が本当にあるかどうかは不明だが、面接で好印象を与えるために整形する女子学生は多い。

 そうまでして内定を勝ち取っても、その先にはさらに厳しい現実が待ち構えている。能力を発揮できる場を与えられることは稀で、男性社員の補助要員として職場の“お飾り”にされてしまう。

「性接待」を強要されることもある。今年5月に投身自殺した26歳の女性消防士は、同僚らの証言によると、職場関係の飲み会のたびに性行為を強要されていたといい、現在警察が捜査中だ。

 内閣府(日本)がまとめた2013年版男女共同参画白書によれば、韓国の女性管理職の比率はわずか9.4%。アメリカ43%、イギリス35.7%、フランス38.7%などに比べると圧倒的に低い。日本も11.1%とかなり低いが、韓国はそれをさらに下回る。

 OECD(経済協力開発機構)の調査では、韓国の男性の平均賃金を100としたとき、女性の賃金は61。格差は39%となっている。これは統計がある加盟国平均15%の2.6倍で、ワースト1位だ(2010年)。

 今年、史上初の女性大統領が誕生し、大きく変革を遂げたイメージがあるが、国際社会の尊敬を得るには程遠い現実がある。

【*注】DVや犯罪から女性を守るため、24時間運営されている通報窓口。女性家族部がNGOに委託し事業支援を行なっている。

※SAPIO2013年10月号

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト