アワビ、ウニ、カニといった高級海産物の“密漁”が、暴力団の巨大シノギとなっている──。「食の合法性」を問題視してこなかったこの国の現実を、フリーライターの鈴木智彦氏が鋭く突きつける。
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北海道に青い珊瑚礁はない。熱帯魚が泳ぐダイビングスポットもない。が、北の大地にもダイビングショップはある。道東の店舗の大得意は密漁団だという。
「毎朝、うちの事務所の前にボンベが10個くらい置いてあります。うちとしてはそのボンベに空気を入れるだけ。こんな寒い時期、北海道で毎日それだけのボンベを使うのだから、誰が見たって密漁者。
うちの店が、お客さんの仕事まで詮索する必要はないんで黙ってます。海保の職員はみんな知ってます。うちの店に張り込んで、密漁団の使っている車を割り出すんです。聞かれたら知ってることだけ話します。どっちにもです。海保のスパイでもあるし、密漁団のスパイもやってる」(ダイビングショップの店長)
地域の人間も、おおかた密漁団のことは知っている。日本での密漁は、地域がそっくり共犯者になるケースが多い。
「俺たちのおかげで安い魚が食える。おばちゃんたちのパートも生まれる。俺たちを逮捕したら、市民が黙っていない」
海保の取り調べに対し、そう豪語した密漁団のボスもいたらしい。こうした密漁システムは、地元を潤し、街の経済を間接的に支えているのだ。
※週刊ポスト2013年10月4日号