日本代表するコリアンタウンがある東京・新大久保では、昨年から在特会(在日特権を許さない市民の会)による激しい嫌韓デモが繰り返し行なわれている。そうした過激な在日排斥活動は、主に会員や有志による個別のカンパで成り立っているという。彼らの過激な抗議活動は、『YouTube』などの動画サイトを通じて拡散され、それに共感したネット右翼が活動に加わるケースが多い。
「いわゆるネット右翼は『在日が日本を支配している』という陰謀論ですべてを解決できる気になっている。なかには『在日には生活保護が優先的に支給されている』、『在日は水道光熱費がタダ』、『メディアには在日採用枠がある』といった支離滅裂な主張を鵜呑みにし、真剣に怒っている人もいます。ネットだけを情報源にしているため検証能力がなく、シンプルで強い言葉に振り回されてしまうのでしょう」(ジャーナリスト・安田浩一氏)
韓国では、慰安婦問題を「事実と異なる」と主張した学識者が袋叩きに遭ったり、安倍総理が試乗した自衛隊機番号がたまたま「731」だったことを「旧日本軍の細菌兵器部隊と重なり配慮が足りない」とマスコミが騒ぎたてたりするなど、言いがかり的な反日が横行している。日本で広がりつつある在日排斥の言動は、そうした低レベルな韓国世論と大差ない。ブロガーの山本一郎氏が語る。
「在特会のデモやヘイトスピーチは、まるで日本社会全体が在日韓国・朝鮮人を迫害しているような印象を諸外国に与えています。同じ主張をするのなら排他的なものではなく、日本固有のルールを無視し社会に溶け込まない人に対して理知的に働き掛けるべき。また、彼らが主張する在日特権については事実関係が疑わしいものが含まれている。主張するのは自由ですが、その前にきちんと事実関係を調べ、根拠を明確に示すべきは言うまでもありません」
昨夏、反日機運がピークに達した韓国では、領土問題や歴史認識を巡り、連日のように日本への抗議活動が展開された。韓国の極右団体は、日の丸を燃やし、日本の国鳥であるキジを惨殺し、日本大使館に投げ込むなどの蛮行を繰り返して世界中から眉をひそめられている。このまま日本でも無秩序な外国人排斥が繰り返されれば、同様に日本に対する世界の目も変わってしまうだろう。
「自分の主張を世界に発信することは自由ですが、ヘイトスピーチそのものや差別的な活動動画の類は日本に対する心証を悪くするだけです。これでは、韓国の反日教育や日本に対する差別的な活動を非難できなくなる。『日本でも同じことをしているではないか』と反論される材料を与えているようなものです」(山本氏)
※SAPIO2013年10月号