NHK『きょうの料理』『あさイチ』でおなじみの“ばぁば”こと料理研究家・鈴木登紀子さん(89才)が、秋の味覚の代表ともいえる松茸を使った美味しい料理を伝授する。
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お料理教室を初めてかれこれ50年。その時期の“国産の旬”に心をくだいてまいりましたが、いよいよ今年は、白旗を上げることになりそうな食材がございます。
それは松茸。昔は秋の訪れとともに国産の松茸が一斉に出回り、スーパーの野菜コーナーでも誇らしげに鎮座しておりましたが、ここ数年、国産松茸の収穫は激減、目が飛び出るような高価なものになってしまいました。お教室では、昨年まではなんとか国産ものを使っておりましたが、今年はどうなりますことか…。
しかし、松茸をあきらめる必要はございません。国産ものがダメなら輸入で…と、世界中から日本に松茸が届くようになりました。お値段も手頃ですし、ちょっと上等のきのこを買うような気安さで購入できます。
なかでも北欧産の松茸は、日本のものと性質が似ているとかでお味も悪くないといいますし、カナダ産のものもなかなかのもの。かえって松茸が気軽に楽しめるようになって、結構なことだとばぁばは思います。
ただ、国産と決定的に違うのは、あの独特の香りと風味。これは致しかたないことなのですが、長旅を経るため鮮度が落ちますし、普通は洗わないきのこ類も、輸入ものは法律で洗浄する決まりになっておりますために、風味や香りがガクリと落ちてしまうのです。
そこで、ばぁばの秘策をお教えしましょう。下ごしらえの際のひと手間で、国産ものにも劣らない風味が甦りますよ。
まず、松茸を買ってきましたら、根元の石突きを鉛筆を削るようにそぎます。次に水で濡らして固く絞ったガーゼで笠をペタペタとやさしく押さえながら、汚れを落とします。この時、笠を覆っている薄~い衣をはがさないように、くれぐれもやさしくね。
松茸がきれいになったら、薄切りにします。バットなどに並べ、(松茸1本につき)お酒を大さじ3ふって、5分ぐらいそのまま寝かせます。こうしますと、あら不思議。あの松茸の芳香がふわりと甦るのです。
そのまま網でさっと炙り、すだちを絞っていただいてもおいしいですが、松茸といえば、やはり土瓶蒸し。
筋を取ってそぎ切りにし、塩・酒各少量をふった鶏ささ身、背わたと頭を取ってゆで、殻をむいたえび、薄切りにしたかまぼこ、ぎんなんとともに松茸を器に等分に入れ、塩と薄口しょうゆでお味を調えた温かいだし汁を注ぎます。
焼き網にのせてひと煮立ちさせ、酒小さじ1ずつをふって、ざく切りにした三つ葉適量と半割にしたすだちを添えます。
ほ~ら、なんともいえない松茸のよい香りが鼻をくすぐりますでしょう? 帆立ての炊き込みご飯など、シンプルなご飯ものとよく合いますよ。ハレの日のおごちそうに、ぜひどうぞ。
※女性セブン2013年10月3日号