ライフ

回転寿司の代用魚 大手ほど発覚時のリスク考え使用頻度減る

 太平洋クロマグロの国際的な漁獲規制が確実となった。来年2月から15%以上削減となる。マグロ類中最大のクロマグロは絶滅の恐れがあるとしてワシントン条約への登録も議論される魚。9月6日付の各全国紙は、大きなスペースでこのニュースを伝えた。

 週末ともなれば行列ができ、1時間以上待つことも多い回転寿司店。新鮮ネタが安くておいしいとなれば、客が集まるのは当たり前。マグロなどの解体ショーを開催するなど、エンターテインメント性の高い趣向を凝らした店も登場し、いずれも人気を得ている。

 その一方で、“回転寿司店で扱うネタには、ホンモノとは似ても似つかぬ「代用魚」が使われている”といった、何やら「怪しい噂」が流れているのはご存じだろうか。

「見た目や味が似ているものを、高級ネタの“代用魚”にしている店は今でも多い」

『回転寿司「激安」のウラ』(宝島社)の著者でジャーナリストの吾妻博勝さんはそう語る。吾妻さんがこの「カラクリ」についての本を出版した2007年は、食肉の偽装問題、『船場吉兆』の産地偽装や賞味期限切れが発覚するなど、食に関する関心が高まった年である。出版後、ある全国チェーンの回転寿司店が、1億2000万円かけてメニューを作り直したという笑えない話があるほど、数年前までこの手の偽装は横行していた。

「回転寿司店で“イカ”を食べたが、どの種類なのかよくわからない。調べてみると、体長2m以上になる“アメリカオオアカイカ”だとわかった。このイカは、肉厚なので“イカソウメン”に加工されることの多い代用魚でした。それで、他にもあるのではと」(吾妻さん・以下同)

 代用される魚が悪いわけではない。それがおいしい魚ならば深海魚でも何でも食べるべきであり、その場合は、魚介類の正式名称を表示すべきであると吾妻さんは言う。しかし、水産物は、食品衛生法やJAS法による原材料表示が義務付けられているが、飲食店で直接提供される食品については、その義務はない。

 また、水産庁では魚の名称のガイドラインが設けられているが、法的強制力があるわけではない。そのため飲食店の場合、“イカ”とだけ表示して正しい名前を記さなくても問題はないのが現状だ。

「ペルー産の“マルアナゴ”というウミヘビ科の魚は、江戸前の“アナゴ”になり、“イクラ”は“サケ”でなく“マスの卵”のことが多い。また、白身魚の代用として重宝される“アメリカナマズ”は、茨城県霞ヶ浦では、“ナマズ”として養殖され販売されていますが、“タイ”や“ヒラメ”“アイナメ”として使用されることもあります。

 それだけ、おいしい魚であるともいえるわけで、本物のヒラメの味を熟知している私でも、炙り+レモン汁になれば、味を見分けるのは難しい。ならば、偽装などせず、魚本来の名前で寿司ネタにすればいいと思うんです。“深海魚回転寿司”なんて、いいじゃないですか」

 現在、マグロの偽装は減っている。養殖、蓄養マグロが増えているためだが、クロマグロではなく、メバチマグロやキハダマグロなどの安価なマグロが使われることも多い。ただマグロとだけ書いてある場合は、これらの安価なマグロである可能性が高いそうだ。それに、ネギトロも安価なマグロやアカマンボウを使って加工されている場合も多く、業務用調味料で味付けされているため味はいい。本物のクロマグロの中落ちを使ったネギトロを食べるなら、高級店でない限り、難しい。

「とはいえ、大手回転寿司店は相当な企業努力をしています。ロボットに寿司を握らせ、海外の工場で加工した寿司ネタをのせるなど、人件費や原材料費を極限まで削減し、100円前後の価格を維持している。大手ほど代用が発覚したときのリスクが大きいため、代用魚の使用頻度は減っているのです」

※女性セブン2013年10月3日号

関連キーワード

トピックス

平原容疑者の高校生時代。優しい性格だったという
「小学生の女の子にフフっと笑いかけ…」平原政徳容疑者(43・無職)が見せていた常連コンビニ店での一面「いつも目が血走っていた」【北九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
ドラフト会議で注目を集めた清原正吾
《慶大体育会野球部・清原清吾の就職先》両親の影響で「電通か博報堂」も浮上 芸能関係の会社も視野に
NEWSポストセブン
筑波大学合格で不安視される悠仁さまの通学問題(2024年8月、岐阜県関ヶ原町。撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学合格で不安視される“車で往復3時間”の通学問題 移動のルートやタイミングが特定されやすく警備は困難 “卒業を待たずに留学”の可能性も
女性セブン
「玉木雄一郎首相」が浮上した背景とは(時事通信フォト)
「国民民主党・玉木雄一郎首相」が浮上 予算成立のメドが立たずに追い詰められた石破首相が「野党の協力で予算を成立させ退陣」「自公国で連立」の有力シナリオ
週刊ポスト
CM中に先輩アナから容姿をいじられる上垣皓太朗アナ(めざましmediaより)
《イジリ騒動を完封》フジテレビ上垣皓太朗アナのリアルな評価 「Xトレンド入り連発」快進撃を続ける理由 
NEWSポストセブン
宮田笙子(時事通信フォト)
《喫煙・飲酒でパリ五輪辞退》体操女子の宮田笙子選手、400年の歴史誇る寺院の母親が明かした現在「まだ実家にも帰ってきていません」
NEWSポストセブン
格闘技イベント『BreakingDown』の会場に行った川口さん(本人Xより)
《“男性の体臭発言”で炎上》川口ゆりを司会に…イベント主催者が明かす「起用の経緯」と「参加者からの反応」
NEWSポストセブン
内田容疑者は北海道留萌市の高校生・村山月さん(17)を殺害した疑いがもたれている
【旭川女子高生殺害】駅裏で売春のために立っていた少女たちは今…内田梨瑚被告(22)の逮捕で変わった繁華街「サンロク街」の現在、警察が本腰入れるもキッズたちはSNS使って“買う男”探し
NEWSポストセブン
送検時の平原容疑者(左、共同通信)。右は高校時代の平原容疑者
「被害者と同じ歳くらいの娘がいたと聞いている」平原政徳容疑者に「数か月前に離婚した」証言も…謎が深まる“犯行動機” 【北九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
私的な外出が増加している紀子さま(2023年、ベトナム・ハノイ。写真/時事通信フォト)
《悠仁さま、推薦で筑波大学に合格》大学決定の過程で“蚊帳の外”だった紀子さまに起きた変化、私的な外出が増加
女性セブン
無罪判決となった須藤早貴被告
《紀州のドンファン・13億円の遺産》「私に渡したいって…」元妻・須藤早貴被告が無罪判決で勝ち取る「13億円遺産相続」のゆくえ 野崎さんきょうだいら・田辺市との“3すくみバトル”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 2025年「人生の壁を越える」総力特集ほか
「週刊ポスト」本日発売! 2025年「人生の壁を越える」総力特集ほか
NEWSポストセブン