都市部や郊外にかかわらず、近ごろコンビニエンスストア店内でコーヒーを飲んだり、軽食やスイーツを食べたりして一息つく人たちの姿が目立つようになった。
それもそのはず。コンビニ各社が飲食スペース付きの店舗を増やしているからだ。例えば、業界3位のファミリーマートは2013年度に計画している新規1500店のほぼすべてに飲食コーナーを構えるという。また、同4位のサークルKサンクスも都市部の新店に続々とイートインコーナーを設置している。
商品の持ち帰りが一般的だったコンビニが外食化している理由は何なのか。コンビニ業界の専門紙『コンビニエンスストア速報』編集長の清水俊照氏がいう。
「究極の目的は客数アップです。昨年、コンビニは全国で5万店を突破しましたが、必ずしも各社ともに好調なわけではありません。出店競争の激化により、かえって最大手であるセブン―イレブンの強さが際立っています。
また、店舗数が増えた分、主要顧客の30代男性以外に客層を広げなければ業績拡大は見込めません。そこで、主婦層やOLなど女性客にも気軽に立ち寄ってもらうためにイートインスペースを充実させ、少しでも王者に追いつこうというのが2位のローソン以下の戦略なのです」
店内での飲食や滞在時間の長さが必ずしも客単価のアップにつながるとは限らないが、流行に敏感な女性たちでコンビニが賑わえば、その口コミによる波及効果は絶大だ。当サイトの取材でも、こんな女性たちの声が寄せられた。
「ミニストップのおにぎりは店内調理で出来たて、ボリュームもあるのでいつも昼食用に買って会社に行きます。休日はソフトクリームやパフェなどスイーツを店内で食べることもあります」(20代OL)
「昼休みに時間がないときは、ナチュラルローソンでオーガニックコーヒーを飲みながら、焼き立てパンを食べるのが定番になっています。他のコンビニより高めですが、素材にこだわっているので値段相応だと思います」(30代OL)
「散歩や買い物の帰りにファミリーマートでカウンターコーヒーを飲むのがマイブームになっています。ついでにプレミアムチキンや揚げものなどの惣菜を買って子供たちのおかずにしてしまうこともよくあります」(30代主婦)
こうした女性たちの意見には、イートインコンビニ成功の条件がいくつも隠されている。
まずはその場で飲食したいと思わせる、出来たて、作りたての商品をいかに増やせるか。「しゃべれる、食べれる」をコンセプトにイートインの先駆け的な存在であるミニストップは、店内調理のスイーツに力を入れる。
有名洋菓子店「パステル」とコラボした『なめらかプリンカフェ』を9月27日より販売する予定で、持ち帰りスイーツとは一線を画した“カフェ化”でイートイン需要を囲い込む構えだ。
だが、いくら店内調理のメニューを増やしても、くつろぎのスペースがなければ外食利用は望めない。
「イートインのスペースを見渡したとき、いかに小ぎれいで女性の『おひとりさま』でも抵抗なく飲食できる空間になっているか。カウンターの広さなど使いやすさが命といえます。その点、ナチュラルローソンはもともと商品の素材がよく、女性客のイメージもいいので一歩有利です」(前出・清水氏)
コンビニがカフェにもファストフードにもなる時代。セブン―イレブンのいれたてコーヒーが1日1店舗平均91杯、累計2億杯も売り上げる勢いを見れば、イートインの将来性は無限大に広がっているのかもしれない。しかし、今後の課題もある。
「値段やクオリティーを上げ過ぎると身近なコンビニとしての支持は得られませんし、これまでのようにどの店に行っても同じ商品を扱う“金太郎飴”のような商品戦略では店内調理やイートインの効率はかえって悪くなるばかりです。
例えば、主婦の多いエリアで揚げものなど惣菜系を増やし、一人暮らしの女性やファミリー層の多いエリアではスイーツを多く取り揃えるなど、地域の嗜好や素材に応じた“フォーマット戦略”が不可欠になると思います」(清水氏)
コンビニのイートインが地域コミュニティーとして新たな役割を担うことができるか。