日本人は日本の税金は高いという思い込みがある。つまり“痛税感”が高いと感じているわけだ。痛税感とは文字通り税に対する痛みという意味。日本は先進国の中でも租税負担率が低いにもかかわらず、痛税感が高いことが昨今、経済学者らの間で注目されている。
OECD(経済協力開発機構)諸国の国民所得に対する税負担率の統計(2010年)を見ると米国22.6%、英国36.4%、で日本は22.1%。消費税も米8.8%(ニューヨーク州)、英20%で日本は5%。税負担率が高いことで知られるスウェーデンは46.9%(消費税25%)で日本より2倍以上も重い。
日本の税負担率はこのように低いのだが、国際比較調査グループ・ISPPが2006年に行なった各国の『中間層の租税負担に関する調査』では、税負担率が高いと思っている国民が6割程度いるとされ、日本は主要国の中で5番目に高い(1位のフランスは8割弱)。なお、スウェーデンは日本より下位の8位である。
なぜなのか。ある厚労省関係者は、「中間層が実感できるサービスが少ない。日本は出産、育児、教育、医療などの公共サービス=ソフト面をそっちのけでインフラなどのハードを優先させてきたからだ」と語る。
北欧諸国は子育て、介護などの福祉が充実しているのはよく知られるが、日本はそれらのサービスの多くを個人個人が自ら負担して“購入”することを強いてきた。一方で道路やハコモノ行政で税金をジャブジャブと無駄に使いこんできた経緯がある。そのツケが当然、痛税感につながっているのだろう。
「スウェーデンのある政治家は、『国民は税金が将来返ってくるものと捉えている。政府は国民にサービスを提供する。その代わりに国民には税金を納めて貰う。両者が偽りなく役割を全うすればウィンウィンの関係になれる』といっていた。一方、日本では今更、その信頼関係を構築したいから福祉の予算、つまり税金が必要というのは本末転倒かもしれない」(同)
国民が納得するはずもない。
※週刊ポスト2013年10月4日号