日本でも依然、入手困難な日々が続く米アップルの新型「iPhone」。かつてのバージョンアップと比べて、機能的なサプライズは見られなくなったとの声もある中、発売から3日間で全世界の売り上げ台数が900万台を超えた。iPhoneブランド恐るべしである。
そんなアップル社は間髪入れずに次なる新製品を開発中だという。それは従来型のスマホではなく、腕時計型で身につけて使う「ウェアラブル端末」だ。すでに『iWatch』の名称で商標ロゴを日本でも登録済みで、ネット上では早くもデザインのイメージ画像が出回っている。
海外の金融アナリストなどの予測によれば、iWatchの発売は2014年後半、価格は日本円で2万円前後になるのでは? と見られている。
一体、どんな端末なのか。モバイル評論家で青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏に聞いてみた。
「まだ情報が少ないので何とも言えませんが、そもそもiPhoneを開発したときに、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は『これはスクリーンの大きなiPod(デジタルオーディオプレーヤー)で、そのうえ通信やインターネットもできる』と話していました。
アップルはiTunes(動画や音楽の再生・管理ソフト)のコンテンツを重視しているので、もしウェアラブル端末を出すならば、音楽視聴を意識した端末になりそうな予感はします。ただ、腕につけるからこそ便利な機能をたくさん盛り込まなければ、わざわざ腕時計型にする意味はありません」
常に身につける腕時計は、スマホやタブレットのように両手をふさがれずに操作できるのが最大のメリット。音声機能などを駆使してより操作が簡略化できれば、スマホの「代替機器」となり得る可能性すら秘めている。
「すでにグーグルのアプリなど出ていますが、メールやカレンダーの情報から、その人が次にどんな行動を起こそうとしているのかを予想して、黙っていても案内してくれる機能があります。飛行機の出発時間から、目的地の天気や店情報、アポイント相手に関する情報まで自動でポンポン出てくる。
こうした情報をウェラブル端末と連動させて常に表示させておけば、生活の邪魔をせずに自ら検索する手間も省けます。iPhone5のOSから載っているチケット・クーポン管理アプリの『パスブック』なども連動の仕方によっては、必要な場所で必要な情報が得られる、より便利なアプリになるでしょう」(前出・木暮氏)
ウェアラブル端末はなにも腕時計に限られた形態ではない。今年2月より米国で試用機が販売されている米グーグルの『グーグルグラス』は、その名の通りメガネ型端末だ。メガネの右上に映し出される画面にネット情報が次々と表れるというもの。
だが、便利になればなるほど、かえって問題点も浮かび上がっている。『東京IT新聞』編集長の西村健太郎氏がいう。
「そもそもメガネで情報を見ながら歩くのは危ないとの体験談が出ていますし、音声操作で他人に気付かれずに写真が撮れるために、プライバシーを侵害されるとの危機感も高まっています。米国内ではすでに『グーグルグラスお断り!』なんて貼り紙をする公共施設もあるようです」
歩きスマホならぬ、歩きメガネが話題になる時代――。ウェアラブル端末は今後もソニーの『スマートウォッチ2』や韓国サムスンの『ギャラクシー・ギア』、日本のベンチャー企業が開発した頭に装着するタイプの『Telepathy One(テレパシー・ワン)』など、続々と日本での発売を控えている。
「ウェアラブル端末はどこまで利便性を高め、どれだけの機能を搭載すべきなのか、まだ試行錯誤の段階です。よく“スマホの次”のブームになると言われますが、ユーザーが本当に求めているのかという需要を見誤れば、普及はおぼつかないでしょう」(前出・西村氏)
単なるアクセサリーの域を超えたウェアラブル端末の開発競争は、人間の思考能力や情報処理能力を試す戦いでもあるのかもしれない。