「ちょっとエロくて甘酸っぱい」「数字年齢の恐怖から解放された」「いい年なりの恋の悩みに共感」など多くの反響を呼んでいる小説『エストロゲン』(小学館刊)。
著者の甘糟りり子さん(49才)と、『淋しいアメリカ人』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作家であり、およそ50年前にシングルマザーになり日本中から注目された桐島洋子さん(76才)が対談。常識にとらわれない“聡明”な名言がいくつも飛び出した。
甘糟:『エストロゲン』のテーマのひとつが、アンチエイジングです。年齢に抗うのはみっともないという自覚はありますが、40代で年齢から解放されるのはまだ難しくて。
桐島:私が多少は年齢を意識したのは50代半ばを過ぎてから。70代になってやっと見た目も気にかけるようになりました。
甘糟:そういう桐島さんからすると、50才前後の若造が年齢でジタバタしている姿というのはいかがですか?
桐島:不思議な感じ(笑い)。40、50代なんて最上の季節じゃないですか。ヒトは成熟してこそ面白くなるんですもの。その頃の私なんて、仕事だ、恋だ、子育ての仕上げだ、旅だ、料理だと、すべてエンジン全開で、年齢なんて気にしている暇はありませんでしたよ。
――桐島さんは1967年に30才で従軍記者としてベトナム戦争を取材。40才目前の1976年には『聡明な女は料理がうまい』がベストセラーになる。現在は40代の友人一家と同居をしながら、大人の寺子屋『森羅塾』を主宰。
甘糟:従軍記者として戦地に行かれた経験は、その後の人生や恋愛にどんな影響を与えましたか。
桐島:人生これからという若者たちがどんどん無惨に戦死していくのを見送りながら生き残ったのですから、この貴重な生命をいい加減には扱えません。一生懸命に生きます。人を愛するのも本気でなければ意味がない。私は恋愛体質ですけれど、お遊び気分の軽やかな恋愛ゲームなんて全然興味がありません。だから危険や不利を顧みず不倫の恋に突き進むことが多かったですね。
甘糟:「本気だからこその不倫」という発想は斬新ですね。
桐島:いえ、もちろん不倫じゃないに越したことはないけれど、私は知的、文化的に分かち合うものが多い人でなければ愛せないから同世代の相手がいい、となるとだいたいみんな結婚してるでしょう。
甘糟:確かに、知的で文化的なかたでないと、桐島さんのお相手は務まらないんでしょうね。
桐島:結婚は奥さんの優先権だからそれなりに尊重し、離婚を迫ったりはしませんけどね。不倫という言葉は、一種の慣用語として使っているだけで、倫理に反するとは思っていません。今の人はもっとドライだと感じていたけど、そうじゃないんですね。
甘糟:いつの時代でも、自分より下の世代ってドライに見えてしまうものなんでしょうか。でも、時代や世代が違っても、人を好きになる気持ちって、必ず湿度がまとわりつくものだと思います。
桐島:私の年代の女友達は、いい結婚をしていても、スマートに浮気してる人が少なくありませんでしたよ。
甘糟:私はスマートな恋愛なんて経験がなくて…。極端にいえば、みっともなくもがくことが恋愛だと思ってます。この物語でもそこを描くことにエネルギーを使いました。あんまり割り切ってしまうと、つまらない気がしちゃうんです、恋愛もセックスも。
※女性セブン2013年10月10日号