女性のエイジングと真っ向から向き合い反響を呼んでいる小説『エストロゲン』(小学館刊)。著者の甘糟りり子さん(49才)と、『淋しいアメリカ人』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作家であり、およそ50年前にシングルマザーになり日本中から注目された桐島洋子さん(76才)が対談。常識にとらわれない“聡明”な名言がいくつも飛び出した。
甘糟:これを書くにあたって、同世代の男女何人にも話を伺いましたが、恋はしたい、でも、その時にみっともなくなる自分も怖い、という声をいくつも聞きました。恋愛が魅力的な者同士の特権という感覚は、私にはないかな…。いたって普通の人たちが、たまたまタイミングがあってお互いを補い合う、という恋もいいなあと思います。というか、桐島さんのようなタフさを持ち合わせている人は少ないんですよ。残念ながら。
桐島:そんな弱虫って始末が悪いなあ。いっそ徹底的に自虐的な一人旅で涙を絞り尽くしたら? 私は一度それでスパッと吹っ切ったけど。でも二度としたくない。今はもう、きれいね、素敵ね、おいしいねと喜びを分かち合える楽しい旅じゃなきゃ。共感できる人がいると楽しさが増幅しますものね。昔、恋人だった男友達と旅行するというのも結構いいですよ。お互い性的なものが抜け落ちて、深い理解だけが生きている。
甘糟:恋愛対象ではなくなった男の人との旅行というシチュエーションは興味深いですね。女同士とはまた違う安心感があるんでしょうか。そういう心境も、書いてみたいです。
桐島:まだ、あなたはずいぶん色気があるからダメよ。もう少し枯れてからね。76才ともなるとね、男も女もなくなりますから。でも、そういえば何年前だったか20代のはじめにしばらくつきあった同い年のボーイフレンドと半世紀ぶりに再会したの。そのときに「ふたりめでたく喜寿(77才)まで生きたら一緒にお祝いしようよ。うんといいホテルのジャグジーつきスイートをとるからさ」って言うから、「50年昔に戻って一夜の歓を尽くしましょ」と指切りげんまんしたんだけど…(笑い)。
甘糟:ゴージャスなお約束! バブル世代も完全に降伏です。
※女性セブン2013年10月10日号