イチロー(39)の成績低下が著しい。とうとう9月の月間打率が2割を切った。1年間、3割を当たり前に打っていた男からすれば、衝撃的な数字である。
「実は年間で3割を超えていたのは2010年が最後。最近は開幕当初を除けば、1年で一度も3割に到達しなくなった。OPS(*注1)では、規定打席数に達した打者77人中75位。打者としての価値は、レギュラークラスでは最低レベルです。
守備面でも、同じく3年前から顕著な質の低下が見られます。RF(*注2)はリーグ中位から下位に低迷している。何より最近はイチローらしくないエラーや、緩慢な守備が目立ちます」
こう語るのは、プロ野球を各種データから分析した『プロ野球なんでもランキング』(イースト・プレス刊)著者の広尾晃氏だ。
成績の低下が加齢によるものなのか、モチベーションの低下なのかはわからない。しかしこの成績を見たニューヨークのファンや記者からは、厳しい意見が出ているのも事実だ。
「9月23日には、チームメートであるマリアノ・リベラの引退セレモニーが行なわれましたが、今季もリーグトップクラスの43セーブを上げながら引退を決意した守護神と比較して、“本当に引退すべきなのはイチローではないか”という声が出ていました」(在米スポーツジャーナリスト)
イチローは終わってしまったのか──。ただ、明るい材料がないわけではない。
「足は衰えていません。20盗塁はリーグ21位ですが、盗塁成功率は9位。盗塁ランキングに20代の若い選手が名を連ねるなか、39歳でこの数字は驚異的です。さらに、あまり多くなかった四球が最近増えた。ボール球でもヒットにできるという自信を捨て、どんな形であれ出塁して、チームに貢献するという姿勢を見せています」(広尾氏)
それを裏付けるのが、9月21日のジャイアンツ戦だ。1―1で迎えた7回2死一、二塁、サイ・ヤング賞2度獲得の相手右腕、リンスカムの投じた外角の際どいボールを見送って、四球を選んだ。満塁となった直後、A・ロドリゲスが本塁打を放ち、ヤンキースは逆転勝利を収めた。
見送った際、イチローはバットを出しかけていたが、あえて出塁を選んだ。試合後のコメントが物語る。
「あそこは打てなくもないんだけどね」
【*注1】出塁率と長打率を足し合わせた打者の最も重要な指標の一つ。
【*注2】選手が1試合平均(9イニング換算)でいくつのアウトに関与したかを示す指標。守備範囲の広さがわかる。
※週刊ポスト2013年10月11日号