風水を学べばもっと運気をよくすることができる、と語るのは風水建築デザイナーの直居由美里さん。今回は家の運気を大きく左右する鬼門と裏鬼門について解説します。
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風水では家の中心から見て北東を鬼門、南西を裏鬼門と呼び、家の運気を大きく左右する方位として重視します。鬼門と裏鬼門の思想が生まれたのは、古代中国です。
本土の中央に住む漢民族から見ると北東に当たる東北部の旧満州から遊牧民の匈奴による襲撃をしばしば受けていました。万里の長城は北東から侵入する異民族を防ぐ目的で作られたものです。気候的にも、シベリアやオホーツクからの厳しい風が吹き込んできます。東洋占術では十二支を30度ずつの方位にあてはめますが、北東は丑と寅の方位を合わせた60度で、艮とも書きます。
一方、北東の対角線上にある南西が裏鬼門で、未と申の方位なので坤です。
日本にも鬼門・裏鬼門の考え方がもたらされ、都の建設に強い影響を及ぼしました。平安京では、鬼門除けとして北東に比叡山延暦寺を建立しました。そして江戸時代も徳川家康は江戸城から鬼門にあたる上野に寛永寺、裏鬼門に増上寺を建立し江戸の守りを固めました。
日本の家相学で、鬼門・裏鬼門が重要視されるのは、わが国独自の気候風土と大きな関係があります。
高温多湿の日本では、住まいの北東側は、日当たりが悪く、じめじめとしがちです。風水では湿気を邪気とみなすので、北東方位をきちんと整えていないと、運気に大きなマイナスの影響を与えます。
そのため鬼門である北東は、八方位の中で最も慎重に扱うべき方位であり、トイレや浴室など水回りが鬼門に位置している間取りは凶とされてきました。玄関が鬼門にあるのも、外から悪運が入ってきやすい危険な間取りです。
北東が恐れられるのは、「変化」を象徴する方位だから。家族の変化といえば、相続や代替わり。相続をめぐり骨肉の争いが起こっている家は、北東の掃除が行き届いていないことが多いのです。就職や結婚で子供が独立する時期が近づいたり、転職を考えているなら、北東をきちんと整えれば、スムーズに新しい段階に移行できます。変化は必ずしも悪い結果をもたらすのではなく、変わることにより発展するケースも多いのです。
そして、裏鬼門である南西は西日が当たります。冷蔵庫や冷房のない時代、南西に台所があると、食品がすぐに傷んでしまいカビや悪臭が発生します。だから裏鬼門の台所は避けるべきだったのです。
しかし、換気扇や空調などの設備を備えた現代の住まいでは、鬼門、裏鬼門を必要以上に恐れる必要はありません。鬼門にトイレや浴室があっても、こまめに換気してきちんと掃除していれば、水のよどみは生じません。鬼門の玄関であれば、靴を揃え、たたきの隅々まで拭き清め、濡れた傘は乾かしてから収納するなどの心配りが求められます。
※女性セブン2013年10月10日号