流氷の来る町、紋別。すぐ目の前に広がる雄大なオホーツク海は、冬2月ともなると、遠くアムール川から流れて来た白い氷で埋め尽くされてしまう。しかし、流氷見物の観光客で賑わうその季節以外は、のんびりとした時間が町全体に流れている。
そんな静かな町のかわいい繁華街、はまなす通りの入り口に昨年の 6月、『角打ち酒場』という名の店ができた。
酒屋としては昭和38年から『(有)おおつか』として営業しているが、「創業50年目に3代目として店を継ぐにあたって、飲食店に酒を配達したり販売したりするだけではなく、紋別のためになにかできることはないかと考えたんです。そのときに閃いたのが、角打ちでした」と語る傍士範靖(ほうじのりやす)さん(42)。
すぐに店内に、角打ち用のカウンターがしつらえられた。北海道に角打ち文化は根づいていない。全国の角打ち愛好家に尋ねても、函館に数店舗ある程度で、札幌や小樽などではもう姿を消してしまったという。もちろん、この紋別にもそれまでは存在していなかった。
そんな角打ち不毛の地で、誕生から1年が過ぎた今、サラリーマンを中心に、ホタテ漁師、公務員、教師、観光客らで賑わい、紋別のランドマークとさえ呼ばれるほどの名所に成長した。