あー、高校時代に戻りたい。そう思うことはありませんか? 私の場合は、あの頃がよかったから、では全然なく、ふてぶてしく成長した今の自分なら、生きづらかったあの時代もうまいことやれそうだから!
そんな私の黒い心を見抜かれた? とドキドキした作品が、久保ミツロウ『アゲイン!!』(講談社)。周囲から過剰に恐れられ、孤立した高校3年間を送った今村。卒業式に階段から落ちたことで、3年前の入学式の日に「アゲイン」し、高校生活をやり直すことに。3年前は気になりつつも声をかけなかった女応援団長を応援します。
「三年間みんなから無視され続けてきたこの俺を舐めんな!! どんな扱い受けよーが もう全部慣れてんだよ ボケ!!」という開き直りで、なりふり構わず動き始め、世界が一気に変わっていくことを実感する今村…。自意識過剰でかっこつけてばかりのあの頃の自分を、やり直してくれている今村が痛快です。
が。これは私のような中年のための夢物語ではない、とも思うのです。今まさに生きづらい思春期を送っている若者に「そんな自意識の檻ぶっ壊せ! かっこ悪く暴れろ!」という暑苦しいまでの熱いメッセージを送っている、「今の」物語。思春期のお子さんがいるかたは、ぜひそっと机の上に!
売野機子『しあわせになりたい』(白泉社)は、逆に3年先の未来の世界にタイムトリップするお話。中学受験勉強に没頭していた真実が「女子高生に憧れすぎて」、中身は12才のまま女子高生に。
ルーズソックスをはき(舞台は1994年)、プリクラをとって彼氏をつくって、無邪気に(12才なので!)女子高生を満喫します。そんな中、陰のあるクラスメート・星野さんと仲良しに。大切な人の自殺で深く傷ついた星野さんを、再びタイムスリップして31才になった真実が慰め、その後、女子高生の真実が再び力づける姿は感動的で、女子高生の友情ものとしてぐっとくる作品です。
過ぎ去ってもこれからでも、つらくても楽しくても。「高校時代」は特別な時代なんだよなあと、改めて思う2冊です。
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2013年10月10日号