「倍返しだ!」でお馴染みの大人気ドラマ『半沢直樹』(TBS系)は、大人気のうちに最終話を迎えた。同ドラマでは、バブル期に入行した銀行マンの活躍が描かれていたが、実際のメガバンクでも、50代を迎え、同期の中から執行役員に昇進する人物が現われると、他の行員たちは出向させられるという厳しい出世レースが繰り広げられているという。
ただ、生き残りのサバイバルレースという観点ではプロ野球界も負けていない。選手としてのピークは30歳前後。バブル期にプロ入りした選手たちは、ほとんどとうの昔に引退してしまった。
そんな野球界でただ一人、50歳を前にしてマウンドに上がり続ける現役選手がいる。ご存じ中日ドラゴンズの山本昌投手(48)だ。怪我などにみまわれながらも今季5勝。史上最年長先発勝利、セリーグ最年長勝利など、前人未踏の記録を樹立した。
「やっぱり年齢は意識しますよ。特に最近はね。高校に入学した時、ひげ面の3年生が本当におじさんに見えた。その3年生が18歳。そこから30歳年を取っているんだから(笑い)。ルーキーにどう見えてんのかな? って」(山本)
高校卒業後、ドラフト5位でプロ入り。以降30年間、プロの世界で文字通り生き抜いてきた。
「なぜここまで続けるのか。正直、自分でも理由はよくわからない(笑い)。ただ、自分は野球しかやったことがないから。きっと職を変えるのが怖いんだろうね。中学で野球部に入って、そこから36年間ずっと野球部員のままという感覚。社会に出ていないという感じが強いかな。
でも、それは幸せなことだと思う。実際には、金銭的にもっと幸せな奴はいっぱいいますよ。でも30年間も同じチームでやれるなんて、こんなに幸せな奴はいないでしょう。王さんや長嶋さんより幸せだと思っているんです」(山本)
取材・文■田中周治 撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2013年10月11日号