竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「子供たちが再婚に反対。納得してもらえる遺書を作成したい」という質問が寄せられた
【質問】
67歳になる年金生活者です。65歳の女性と再婚しようと思っているのですが、二人の子供が反対しています。理由は私に不動産を含めた財産が8000万円ほどあり、身寄りのない彼女は財産目当てだと糾弾しているのです。子供たちが納得するような遺書を書く場合、どこらへんに注意すればよいでしょう。
【回答】
子供が納得する遺言とは、あなたが再婚しなかった状態と同様の結果になる遺言ということになります。それには遺言だけでなく、再婚相手の協力が不可欠です。
まず遺言の内容ですが、再婚しなければ全財産は子供二人が相続します。それと同じ効果を狙って、遺言で全財産を子供二人だけに分けるように指示することは可能ですが、問題は、配偶者には遺留分があるということです。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が、遺言に拘らず確保できる権利で、配偶者は法定相続分の半分までの遺留分を持っています。そこで全財産を子供に相続させるという遺言を書いても、あなたの死後、妻が遺留分の権利を行使すれば法定相続分の半分である4分の1の範囲で遺言の効力を失わせて、相続できることになります。
しかしながら、遺留分権利者は遺留分を相続開始前に放棄することができます。放棄があれば遺言の効力は貫徹されます。この遺留分放棄は、家庭裁判所に本人が申し立て、その許可を受ける必要があります。
そこで子供だけに相続させる遺言を作り、再婚相手が遺留分放棄を了解してくれれば良いということになります。もっとも子供が再婚を納得するためには、信頼関係が必要です。というのは、遺留分放棄ができるのは相続人ですから、先に結婚して配偶者になっておく必要があるからです。結婚してしまったら遺留分放棄しないのではないかと心配を持たれると納得は難しいでしょう。また遺言はいくらでも変更できます。疑われればキリがありません。
いっそ生前贈与をしておくと子供も安心かもしれませんが、税金の負担がばかになりません。結局、再婚相手と子供の間を取り持ち、十分な信頼関係を醸成して再婚するのが一番です。
※週刊ポスト2013年10月11日号