大ヒット作の後だけに、気の毒な部分もある。船出したばかりのNHKの朝ドラについて、作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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「あまちゃん」とバトンタッチ、注目の中に始まったNHK朝ドラ「ごちそうさん」。スタートは、「あまちゃん」の初回平均視聴率20.1%を超えた好発進、と報じられました。
が、一週間ほど過ぎて評判を眺めてみると、ちょっと迷走気味かも。特に話題を集めるのが、ヒロイン・め以子の幼少期を演じる子役・豊嶋花ちゃん、6才。「第2の芦田愛菜」と評判が高い子役さんなのだそうですが、その評判は意外や意外。
「あのキャラは苦手」「何だかイラつく」「甲高い声がたえられない」「食い意地汚いキャラすぎる」と、不評の声があちこちで見受けられるのです。
朝ドラの子役に対してこれほど「辛口」の注文がつくのは、ちょっと珍しい現象。それぐらい、インパクトある演技、ということでしょうか。
では、多くの人が「苦手」「イライラする」と感じる点はどこに?
め以子はガツガツと食べる。時には手で食べる。立ったまま食べる。人に分け与えたり譲ったりしない。物を食べるたびに、目を細めて天を仰ぎ「おいしぃー」とオーバーアクション。「とにかく食べることが大好き」というキャラクターを制作側は際立たせたいのでしょう。過剰で極端な演技をさせられています。
「あまちゃん」の刺激に慣れた視聴者の関心を、そのままいただこうというねらいかもしれません。けれども、その過剰なカリカチュア的演技が、「食い意地の張り方がちっとも可愛くない」「意地汚い」という批判へつながっているとしたら、皮肉なことです。
これではあまりに子役がかわいそう。本人の気質や雰囲気云々というよりも、極端な脚本と演出による過剰感から、バッシングされてしまうのだとすれば……。
たしかに、情報化社会の中で、年齢にそぐわず大人びたていたり、こまっしゃくれた子どもも存在しています。が、そうは言っても子どもは子ども。子どもらしい無邪気な面にスポットライトを当て、それを引き立たせたり目立たせれば、「かわいい」存在に見えてくるはず。幼さの中にはそうした素地が基本的に備わっているはずです。
子役だけでありません。
このドラマの登場人物の大人たちの役割も、何だかちょっと……。例えば、おいしいジャムを独り占めする孫を、厳しく叱らない祖母。他の子どもが座っている中で、立ったままガツガツ食べる我が子を、ニコニコ見ている両親。
はた、と気付かされました。普段あまり意識していなかったけれど、日本人は幼い時から「食べることとしつけ」とが一体になった環境で育つのだなと。そういう歴史が長いこと続いてきたのだなと。
「箸をちゃんと持て」、「お行儀よく食べろ」、「口に入れたまましゃべるな」と、食卓で細々としたことをしつけられて育つ。それが当たり前のことになっている。何て「美徳」ある文化なのだ、と「ごちそうさん」のおかげで再確認してしまいました。
その「美徳」を無視しつつ展開するドラマに、「世の常識」が違和感を発信しているのだとすれば。「ごちそうさん」は、ちっともおいしくない? まだ一週間で結論するのは早いのかもしれません。これから登場してくるヒロイン・杏さんに、期待をつなげましょう。