現在、日本人の死因はがんがトップで、心臓病、肺炎と続き、脳卒中は4位だ。1960年代までは1位は脳卒中で、当時は塩分過剰による高血圧が原因の脳出血での死亡例が多かった。
その後、血圧コントロールが比較的うまくいき脳出血は減少したが、食生活の洋風化や肥満、運動不足などによる動脈硬化で脳梗塞の割合が増加している。脳卒中での死亡は減っても重い後遺症が残る例も多く、医療費や介護費増大の一因となっている。そこで、今後10年間の脳卒中発症確率をある程度予測できる計算法が開発された。
藤田保健衛生大学医学部公衆衛生学の八谷寛教授の話。
「国立がん研究センターが平成5年から14年間にわたり、約1万5000人を追跡調査したデータを解析しました。脳卒中を発症した方の研究開始時の健診結果や生活習慣の特徴を統計学的に明らかにして点数化しました。脳卒中の発症確率を上げる原因は一つではないので、総合的判断をするように複数の危険因子を採用しています」
危険因子は過去の研究を元に、性別、年齢、血圧、肥満度、糖尿病の有無、喫煙、高血圧による降圧剤の服用があるかの7項目を取り上げている。飲酒も脳卒中の危険因子だが、飲酒は高血圧や糖尿病をひき起こすことで脳卒中の発症に影響するため、わざわざ点数化の必要がないと判断された。運動もしかり。しかし、喫煙は糖尿病になりやすい上に、タバコは直接血管を傷つけるという影響もあるため、リスク要因として残っている。
7項目は数値ごとに点数化されている。中でも発症確率に大きく関わっているのが血圧と年齢だ。正常血圧と最高血圧180以上では点数が13点も違う。年齢は40~44歳が0点に対して、50~54歳が6点、55~59歳になると12点と一気に上がる。
性別は女性が0点で男性は6点と男性の方が発症リスクは高いが、喫煙を見ると男性は4点に対し女性は8点。喫煙男性は6+4で10点に対し、女性は0+8の8点で、喫煙男性とわずか2点差だ。
「発症確率は%で表示されますが、1%といわれても分かりにくいので、血管年齢を割り出しています。例えば高血圧や糖尿病、喫煙など何もない理想的な人でも、69歳になると発症確率が5%になります。高血圧の人は58歳で発症確率が5%になるので、血管年齢でみると69歳となり10歳も年を取っていることになります」(八谷教授)
この計算法で発症確率を知るだけでなく、それをもとに生活習慣の改善をすることがリスクを下げるポイントだ。計算法は国立がん研究センターHP(http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3284.html)で公開されている。今後は個人のデータを入力すると発症確率だけではなく、生活改善のアドバイスが得られるシステムの開発が行なわれる予定だ。
(取材・構成 岩城レイ子)
※週刊ポスト2013年10月11日号