やはり闇が巣食うには理由がある。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が解説する。
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シャドー・バンキングという言葉に象徴されるように中国経済には公式な統計だけでは測ることのできない〝闇〟が少なからず存在する。いわゆる〝地下経済〟と呼ばれるものだが、その代表的なものとして指摘され続けてきたのがヤミの炭鉱や鉱山である。
炭鉱や鉱山と聞けば国の戦略的産業として位置づけられ、極めて国営に近い形を採る国も少なくないだけに「ヤミ」といわれてもピンとこないかもしれない。だが、中国では「あるはずのない炭鉱や鉱山」があることも珍しくなく、実際に摘発される事例も多い。話題のシャドー・バンキングも、最終的に資金の供給先として多いのが不動産と炭鉱・鉱山だとされている。
こうしたなか先月当局によって摘発されたのが、北京郊外の密雲県達岩村の鉄鉱石のヤミ鉱区であった。国内のメディアが伝えたところによるとこの地区の盗掘は、今年4月に盗掘を取り締まる法律が新たに施行されて以降もさらに盛んになったという。
その理由を尋ねられた村人は、「この地域で農業をすれば1年働いても得られる収入はせいぜい6000元しかない。これは盗掘の1日分の収入だ。危険を冒してもやる意味は大きい」と答えている。
高い金利で集めた資金もこれほど高い利益を生むヤミ鉱山なら十分に回収できる有望な投資先ということになる。また地方政府にとってもこうした現実は必ずしも不都合ではない、農民が豊かになる一方で間接的には地方の歳入にも貢献するからだ。
ここに生じる中央と地方のズレこそが、いつまでも地下経済が蔓延る温床となっている。