パンケーキブームが広がりを見せている。2010年、ハワイの人気店「Eggs’n Things(エッグスンシングス)」が東京・表参道に日本初上陸。その後もハワイやニューヨークなどの専門店が続々登場、今年に入って「エッグスンシングス」の大阪心斎橋店がオープンするなど、全国にその熱が伝播している。“上陸系”が牽引してきたこのブーム、最近ではコンビニや異業種からの参入も相次ぎ、様々な形で私たちの生活に根付きつつあるようだ。
ローソンが9月から発売開始した「厚焼きパンケーキ」(350円)は温めて食べる本格派だ。絞り袋に入ったホイップクリームが別で付いており、好みの量だけかけて甘さの調節ができる。同月ファミリーマートは「スフレ仕立ての窯焼きパンケーキ(チョコバナナ)」(290円)を発売した。窯で焼き上げたケーキの厚さが目を引く。コンビニスイーツの市場は2013年、前年2.5%増の1812億円が見込まれている(富士経済調べ)。パンケーキが市場拡大の新たな目玉となる可能性もありそうだ。
ハワイやニューヨーク発のお洒落系専門店が活況を呈するなか、大阪生まれのあの料理店もパンケーキに目を付けた。たこ焼きを販売する「築地銀だこ」だ。7月に関東にオープンした「銀だこカフェ」では、主力商品のたこ焼きのほか、たい焼き型のパンケーキを提供する。たい焼きの形はしているものの中にあんこは入っておらず、上からクリームやバターをかけて食べる、一風変わった、ここでしか食べられないパンケーキである。
コテコテ関西味とハワイの風薫るスイーツの同居は、一見相容れないようにも思えるが、どちらも“粉もの”(小麦粉をはじめとする、粉から作る食べ物)。江戸時代より粉ものは、日本の庶民が親しんできた味だった。ドーナツやバウムクーヘンなど、粉ものスイーツは過去にもブームを巻き起こしており、現在のパンケーキブームもその流れの一つと見ることもできる。ただ、他にはない特徴もある。
「パンケーキは、主食にもなるし、軽食にもなるし、おやつにもなります。その食べ方の幅広さが受けているのではないでしょうか」
こう語るのは、栄養学博士で『野菜のたし算ひき算』(幻冬舎刊)など著書も多い白鳥早奈英さんだ。
「甘さを抑え、牛乳や野菜などと一緒に食べれば、栄養もきちんと取れる主食になります。一方、はちみつや生クリーム、フルーツソースなどとともに、スイーツとしても楽しめる。大きさや枚数によって量の調整も手軽にできます。忙しくて三度の食事がとれない方が増えたり、個食が増えるなど、あらゆる場面で食の多様化が進むなか、パンケーキの食べ方の広さは現代人に合っているのだと思います。焼くだけですから、作るのも簡単です。ホットケーキは昔からありましたが、名前を変えることで、新鮮さも出ましたよね」
行列のできる専門店からコンビニの手軽な味まで、パンケーキ自体の幅も広がっている。ブームはまだまだ続きそうだ。