プロ野球選手の背番号は、選手の引退や移籍によって次の選手へと引き継がれていく。しかし、多大な功績を残した者にのみ「永久欠番」にすることが許される。今回、楽天の田中将大に対し、まだ20代の現役選手だというのに背番号「18」を永久欠番に推す声が上がっている。だが、球界再編の波に飲み込まれた永久欠番もある。
近鉄一筋、1966~1985年まで通算317勝。エース・鈴木啓示が一貫して背負ってきた背番号「1」は、引退前の1985年7月に、パ・リーグ初の永久欠番となった。しかし2004年、近鉄はオリックスとの合併で消滅、現在は背番号も欠番ではなくなっている。
さぞ鈴木氏は悲しんでいることだろうと思いきや、当人は実にスッキリした表情で語る。
「実は消滅の時、オリックスの球団代表から、永久欠番をそのまま継続させるか打診されたんです。ありがたい話でしたが、僕は近鉄での功績でこの栄誉をいただいたんだし、球団は新しく生まれ変わるのだから、そこで欠番というのもおこがましい。何よりオリックスでは、もう後藤(光尊)君が1番をつけていたしね。
後日、始球式で行った時に、後藤君には“こんな番号をいただいて申し訳ありません”といってもらいました。何の打診もなく欠番を取り消されていたらヘソを曲げたかもしれないけど、オリックスさんの誠意は伝わっていますよ」
※週刊ポスト2013年10月18日号