空前のブームを迎えている自転車だが、自動車と違って保険加入は義務になっていない。数年前までは、商品としてはあるものの、あまり売れなかったという自転車保険にいま、問い合わせが増えているという。通勤通学といった日常生活に限らず、スポーツ、趣味としてなど自転車の利用者増と同時に、トラブルが目立ってきているせいだろう。
毎日、自転車通勤し、たいていの場所には自転車で行く30代の団体職員男性はヒヤリとさせられたことが何度もあるという。
「ブームになる前から自転車通勤しているのですが、東日本大震災のあとから目に見えて道路に自転車が増えています。危ない場面に遭遇する回数も増えました。交差点をものすごいスピードで突っ込んでくる会社員もいるし、どう考えても積載オーバーしている買い物帰りのママチャリもいますよ」
彼自身は、幸いにしてまだ事故に遭ったことはないが、今後は事故をもらってしまうこともあるなと感じるという。
今年7月、小学生男児がスピードを出したまま坂を下り、衝突した女性が寝たきりになった事故で、9500万円の賠償を神戸地裁が母親に命じた。この判決は控訴されて確定していないが、不安を覚えた人が多かったのか、直後には自転車保険の契約件数が3倍増となった商品もあったという。
「慌てて新規に自転車保険に入ってしまう前に、すでに入っている保険を確かめましょう」というのは家計改善プログラム「家計ブートキャンプ」などを実践しているファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんだ。
「火災保険や自動車保険、共済等に加入している場合は、そこに個人賠償責任補償がついていないか確かめましょう。また、傷害保険や交通傷害、共済などに入っていれば、ケガの通院・入院・手術の補償がすでにあり、補償がダブります。まずは加入中の保険を点検し、カバーできず不安を感じる補償が何なのか、冷静にチェックしましょう」
自転車の単独保険として手軽なものには、自転車を購入するときに点検整備済みのしるしとして貼付されるTSマーク付帯保険がある。年に1回、自転車の点検整備を受けることで継続でき、費用は1000円程度。赤色と青色の2種類があり、マークが貼ってある自転車に乗る人すべてが対象で所有者以外が乗っていても対象になる。手軽だが、賠償責任保証は2000万円までだ。
賠償金額が高額化していることを反映して、自転車に特化した保険ではもしものときのために手厚いものが目立つ。たとえば、コンビニエンスストアで気軽に加入できることから伸びているのがセブンイレブンで販売している三井住友海上火災保険の自転車向け保険。お一人様プランに本人以外型という子どもが単独で入れるものがあり、賠償責任が生じたときの限度額が1億円で、示談交渉サービスがある。
また、9月で販売が終了してしまったが月額100円という衝撃価格で知られた「100円自転車プラン」を販売していたau損保が現在販売する保険は、自転車ロードサービスつきだ。もっとも高額なプランでは法律相談や弁護士費用等も補償される。
他にも、通院や手術までカバーするものや、入院日額も様々な保険がある。もちろん、補償内容が豊富であれば保険料も高額になるので、前述の法律相談や弁護士費用もカバーするタイプでは年額1万円を超える。
「賠償責任補償に新たに備えたいなら、すでに入っている火災保険や自動車保険などに特約を付加することで、家族全員の賠償責任補償がカバーされます。高額の賠償責任を問う事故が増えているので、補償額は1億円を目安に。事故による通院・入院・手術、後遺障害等に備えたいなら、自転車保険のほか、交通傷害、傷害保険、共済なども選択肢に。家族が多いほど『ファミリー交通傷害』など家族型がお得です」(前出・豊田さん)
交通事故全体を見ると、全交通事故件数は2004年をピークに減少を続け95万2709件から2012年は66万5138件と約3割も減少している。そのうち自転車事故は全国では全体の15%程度だが、東京都内に限ると2012年は30.2%もの数を占めている。さらに自転車による対歩行者事故のうち、全国の約35%が都内で発生している(警視庁調べ)。東京は自転車事故多発地帯となってしまったようだ。
免許の必要もなく、維持費も安い自転車は今後も都市部で人気を集めるのは間違いない。家族含め、自転車事故への備えを今一度考えておきたい。