国内

憶測飛び交う小泉元首相の「脱原発宣言」は財界の総意ありか

 小泉純一郎元首相が講演会で話した「脱原発宣言」が波紋を広げているが、その背景について、ジャーナリスト・須田慎一郎氏が指摘する。

 * * *
 去る9月24日、都内で開かれたイベントに小泉純一郎元首相が登場し、約1時間にわたって精力的に講演した。その日の演題は、「日本の歩むべき道」というかなり地味なものだったが、話の中身はほとんど脱原発に終始した。

 中でも聴衆の注目を集めたのは、以下に紹介する発言だ。

「日本は一刻も早く、原発ゼロ社会を目指すという方針を決めるべきだ。そして政治がそれを主導すべきだ」

 小泉元首相は、単なる思いつきでこうした提言をしたわけではないようだ。福島第一原発事故をきっかけに、脱原発への「本気度」はかなりのものだ。講演では次のような発言もしている。

「3.11以前に電気事業連合会は『原発が一番コストが安い』と説明してきたが、今では誰もそのことを信じないだろう」

 ストレートな電力業界批判だ。政界を引退し自由な身とはいえ、今も各方面に大きな影響力を残す人物の発言としては、かなり刺激的と言える。

 注目に値すべきは、今の小泉元首相の立場だ。小泉氏が現在活動の拠点としているのは、「国際公共政策研究センター(CIPPS)」。そこで「顧問」の肩書を得ている。

「このシンクタンクは、首相退任後の小泉氏の活動拠点を確保するために、奥田碩(おくだ・ひろし)元経団連会長が音頭をとって設立されたものです。そうした意味でCIPPSには財界主流派の全面バックアップがあると言っていい」(日本経団連副会長)

 だとするならば、前述の小泉発言がそうした財界主流派の意向をまったく無視したものだとは考えにくい。

「CIPPSの会長には奥田氏自身が就任しています。問題の小泉発言には、財界主流派がイメージする日本のエネルギー戦略が大きく反映されていると言ってもいい」(前出の経団連副会長)

 財界が、脱原発へ大きく舵を切り始めたのだとすれば、巷間伝わる話と全く異なる。小泉発言の真意を巡り、様々な憶測が飛び始めているのは当然だろう。

※SAPIO2013年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト