副知事時代から6年にわたり、東京五輪招致に奔走してきた猪瀬直樹・東京都知事(66才)は、帰国後も「スポーツ祭東京2013」開催などで慌ただしい日々を送るなか、こうつぶやいた。
「大変だよ。忙しいのに、うちに家内もいないし…。本当に今、生きていてほしかったですね。招致活動の結果だけは知らせたかった」
昨年12月の都知事就任から、二人三脚で世界に東京の魅力をアピールしてきた妻・ゆり子さん(享年65)は今年7月21日、悪性脳腫瘍のため世を去った。
6月中旬に脳腫瘍の手術を行ったゆり子さんは、数日後、突然脳出血を起こし意識不明に陥った。そんな状態の彼女を残し、猪瀬氏は招致活動のためスイス・ローザンヌに旅立たねばならなかった。
「チームに動揺を与えるといけないので、ほとんど誰にも妻の病気のことは言いませんでした。ローザンヌでのプレゼンを無事終えた帰国前の昼食会後、滝川クリステルさん(36才)とフェンシングの太田雄貴選手(27才)にそっと伝えると、ふたりとも号泣していました」(猪瀬氏、以下「」内同)
“チームジャパン”を第一に考え、ゆり子さんの病気を伝えなかった猪瀬氏は、五輪決定の勝因を「チームワーク」と言い切る。亡き妻の遺影が収められた銀のペンダントを握りながら、これまで語られることのなかった招致チームの舞台裏を明かしてくれた。
今回の招致活動で、猪瀬氏は多くの仲間に恵まれた。なかでも、ゆり子さんの病気を案じ涙した滝クリは、最終プレゼンで「お・も・て・な・し」とポーズをつけ合掌する姿や、流暢なフランス語のスピーチが絶賛された。国際性豊かな彼女だが、猪瀬氏は意外な見方を口にする。
「ハーフで西洋的なイメージが強いけれど、彼女には竹久夢二の描く大正美人のように、古風な感じがある。外国人から見るとオリエントな感じがするので、“おもてなし”を表現するのにぴったりでした。彼女は7月のローザンヌからプレゼンに加わりましたが、ぼくは以前から、『壇上でパッと目を引く人物が必要だ』と主張していたんですよ」
義足のアスリートであり、最終プレゼンでトップバッターの重責を果たした佐藤真海選手(31才)とは、ローザンヌの湖畔でともに走った“ラン友”。いつも明るくムードメーカーの太田選手とも一緒に走って英気を養ったという。
「でも真海ちゃんは最初、ぼくに遠慮して走っていたけれど、だんだんペースを上げるから、速くてついていけなくなったよ(苦笑)」
※女性セブン2013年10月24・31日号