会社に縛られずにそこそこ働き、年収300万円ぐらいで自分の生活を充実させていく「プア充」という生き方を宗教学者の島田裕巳氏が著書『プア充─高収入は、要らない─』(早川書房刊)で提言し、注目を集めている。どうやってプア充生活を実現するのか、島田氏が解説する。
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プア充を実践するために必ず守らなければならない鉄則がある。「外食をしない」「規則正しい生活をする」「ストレスをためるな」の3つだ。
規則正しく暮らせば自炊しやすくなるし、生活のリズムが整えば、タクシー代など臨時の出費も減っていく。忙しく不規則な生活を続けていると、それを補うための無駄な出費が増えてしまう。
また、ストレスで体を壊せば病院代もかかるし、へたをすれば働けなくなる。そこまでいかなくてもストレス発散のために朝まで酒を飲んだりして、結局、無駄なお金を使ってしまいかねない。ストレスをためるのは、精神的にはもちろん、経済的にもよくない。
さらに大切なのが人間関係や縁だ。これなしにはプア充生活は成り立たない。お金を稼ぐために時間を多く費やすと、人間関係を築く時間がなくなるばかりか、それまで築いてきた周りとの縁がどんどん切れていく。その先に待ち受けているのは孤独だ。お互いに想いあうプア充仲間がいれば、お金がなくても十分に幸せに生きていける。
それでも年収300万円では結婚は難しいという人がいるかもしれない。しかし、それは思い込みだ。むしろプア充こそ早く結婚して家庭を持つべきなのだ。1人年収300万円だとしても、2人合わせれば600万円。それで十分だ。どちらかが1000万円稼ぐ、余裕のないギスギスした夫婦より、2人で年収600万円ののんびりした共稼ぎ夫婦の方が幸せだろう。
子供ができると生活が規則的になり、ますます健康的で安定したプア充生活を送ることができる。私立に行かなければ小学校は給食費ぐらいしかかからないし、中学の費用もたいしたことはない。高校の授業料無償化も進んでいる。子供の医療費も自治体によっては無料だ。
今の日本にかつてのような経済成長は見込めない。過剰に働いてもそこそこ豊かな生活を味わえるだけだ。その程度のために体も心もすり減らして働く意味はない。年収300万円のプア充がこれからの日本人の生き方にマッチしている。300万円こそ理想の年収なのだ。
※SAPIO2013年11月号