新聞各紙の消費増税に関する世論調査の数字を見て、国民の多くは思わず、わが目を疑ったのではないか。
〈消費税増税「評価」53%〉(読売新聞10月7日付)
〈首相判断「評価」51%〉(朝日新聞10月7日付)
安倍首相の増税表明会見(10月1日)を受けて、各紙が行なった世論調査の結果は、読売の53%を筆頭に、朝日51%、産経51%、共同通信53%──など、増税を「評価する」「賛成」という意見が軒並み過半数を超えている。
しかも、これほどの大増税を決めたにもかかわらず、共同通信の世論調査では安倍内閣の支持率まで上がった(読売、朝日は横ばい)。まるで国民の多くが増税を歓迎しているような数字なのだ。これには海外メディアもびっくりだろう。
財政悪化は欧米諸国も同じで、日本の増税への関心が高い。フランスではオランド社会党政権が打ち出した増税と社会保険料アップに全国で反対デモが広がっており、AFP(フランス通信)は安倍首相の増税表明を「政治的ギャンブル」と報じた。
米国では財政悪化をめぐる与野党対立で予算案成立の見込みがたたず、ついに公務員に給料が払えずに政府機関が閉鎖されたが、それでもオバマ大統領は国民に「増税に耐えてくれ」とはひとこともいわない。国民の反発が恐いからだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルも日本の増税を「首相の掲げる景気回復という目標を脅かしかねない」と伝えている。
増税は国民の怒りを買い、政権基盤が脅かされるというのは各国共通の原理である。日本のように、増税して支持率が上がるなど世界を見渡しても前代未聞であり、欧米のメディアも政治家も、アベノミクスより、この“安倍増税マジック”に驚いているはずだ。
※週刊ポスト2013年10月25日号