記録的な話題作となったNHK朝ドラの『あまちゃん』。朝ドラ制作には相当な苦労があるようだ。『白い巨塔』『GOOD LUCK!!』『14才の母』など幅広いジャンルを執筆した脚本家の井上由美子さんが描いた朝ドラ『ひまわり』は、松嶋菜々子演じる平凡なOLが、失業・夫の失踪を経て心機一転、弁護士を目指す物語で、設定が異色といわれた。
「父親が失踪していたり、2人の姑が同居したり、通常の朝ドラのような典型的な家族の形が崩れるのです」(井上さん・以下同)
放送された1996年は、バブルが崩壊し、阪神大震災直後で、重苦しい時代だった。
「それでも生きていかなければならない。だから、無謀と言われながらも弁護士を目指すヒロインを描いて、人生はやり直しがきくというメッセージを送りたかった」
当たるのは恋愛ドラマだけという時代の1998年に、事件解決に尽力する女性監察医や女性刑事たちの活躍を描いた『きらきらひかる』をヒットさせる。
「自分は万人に受けるドラマは描けないから、せめて10%の人が熱狂的に支持してくれるドラマを描こうと考えたら、結果的に大勢の人たちに見てもらえたんです」
連続ドラマは時間に追われる作業で、楽なものではないと井上さんは語る。キャストも方向性も決まらない。なのに放送日まであと1か月なんてことも。
「もっと時間があったら! とギャーッと叫びたくなるようなことも多いけど、そうやって勢いで描くことでいいものができたりするんです」
最近は、面白いから、だけでなく、流行っているから見るという人が増えてしまったともチクリ。
「だからこそ、ひとりの女性として、“今描きたいこと”を正直に描くことを大切にしています」
※女性セブン2013年10月24・31日号