【マンガ紹介】
『HOPE』すえのぶけいこ/講談社/450円
『ブラック・ジャック創作秘話(4)~手塚治虫の仕事場から~』宮崎克・原作/吉本浩二・漫画/秋田書店/680円
私は、マンガの中でも「熱いマンガ!」が好きです。作者のパッションが画面からほとばしっているようなマンガに反応してしまいます。
ここ最近「熱い!」と思った作品の1つが、すえのぶけいこ『HOPE』(講談社)。少女マンガ家を目指す女の子・ひかりのお話です。ひと晩で数十ページのマンガを描かなければならなくなったひかり。経験も技術もない少女にいきなりスイッチが入り、全力で猛烈な勢いでマンガを描く描写に鳥肌が!
彼女の周囲にはゴウゴウと炎が渦巻き、ペンを走らせる擬音はカリカリではなく「ザックッ ザックッ」。友人に「描いてるって言うより まるで刻んでる──」と言わしめるほどの(少女マンガとは思えぬ!)熱血ぶりです。マンガを描くという行為は、単なる“頭脳労働”ではありません。
ペンを何十時間も持ち続け、何万(?)本もの線を引き、原稿という「物体」を作り上げる、実はとてもフィジカルな行為です。締め切り前に、何がなんでも原稿を──おもしろい原稿を描き上げようとするマンガ家の熱き姿を、ひかりは体現しているのです!!
マンガ家の熱い姿を描いた作品をもう1つ。草なぎ剛さんが手塚治虫を演じたドラマ『神様のベレー帽』の原作、宮崎克×吉本浩二『ブラック・ジャック創作秘話』(秋田書店)。
マンガの神様、といわれた手塚先生ですが、ここにいるのは泥臭く、ひたすらマンガを描く、1人の中年男性。トレードマークのベレー帽を脱ぎ、メガネさえ外してランニングシャツ1枚で「まるで肉体労働者のように 眼で原稿を喰らうように」マンガを描く! 手塚先生の発する汗のにおいが熱風に乗ってページの向こうから届くように感じられるのです。
新人でも神様でも、マンガを描こうとする者ならば、なりふりかまわず全身全霊を投げ出す瞬間が必ずやってくる…! マンガ家を描いたマンガがこんなにも熱いのは、マンガを描くという行為自体が熱いからであると同時に、作者が主人公同様にマンガ家である「自分」のことを描いているから。主人公の向こうに見える、作者の熱き魂にぜひ触れてください!
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2013年10月24・31日号