タレント・みのもんたの次男が、泥酔していた会社員のカバンを盗み、キャッシュカードでATMからカネを引き出そうとする愚行に世間は驚き、呆れた。この事件によって、みのの2人の息子がいずれもテレビ局に就職していたことが問題視され、世間からはバッシングの嵐が浴びせられた。そしてみのへの批判は「コネ批判」にも発展していった。コネについての日本人の嫌悪感は強いが、社会の中でコネが厳然と存在していることは誰もが認めている。
事実、この国は行政から一般企業に至るまで、ありとあらゆる組織が「コネ」によって成り立っている。まず国家公務員からして「グレーゾーン」の採用がまかり通っている。
終身雇用が保障され、格安家賃の官舎にも住むことができる安定した公務員になるには、難しい試験に合格しなければならない──そう思い込んでいる国民は多いことだろう。
しかし現実はそうではない。人事院の内部資料によると、2011年度に国家公務員に採用されたのは1万6808人。そのうちI種、いわゆるキャリア組は487人、II種(旧・中級職)、III種(旧・初級職)、さらに国税専門官と労働基準監督官を加えた試験合格組は4281人に過ぎない。
残りの1万2527人、全体の70%超は「選考採用」と呼ばれる試験によらない面接などで採用されているのだ。これは学力試験などではないから、当然コネがものをいうことは容易に想像できる。公務員問題に詳しいジャーナリストの若林亜紀氏がいう。
「I種~III種という資格試験を受ける職員は別ですが、ガードマンや受付担当、臨時職員などといった総合職以外の公務員は“コネ”で決まっている場合が多い。公平性の確保という名目のために公募の広告を出したとしても、実際のところは“すでに決まっている”ということが少なくないのです。
私はかつて日本労働研究機構(現・労働政策研究・研修機構)という独立行政法人にいましたが、外郭団体には政治家の関係者や官僚の子女、内閣参与になった学者の教え子が入ってくることが多かった。ある年、採用担当者が、“今年は新卒5人採用で、女性枠が2人。女子大生が100人面接に来たけど、1人はもう決まっているんですよね”といっていました」
※週刊ポスト2013年10月25日号