国内

五輪招致プレゼン 東京ほどストーリー一貫した都市なかった

 高円宮妃久子さま、滝川クリステルのスピーチなど、感動プレゼンの末に決定した、2020年東京での五輪開催。あれから約1か月。日本中に喜びと希望を与えたあのプレゼンの知られざる舞台裏はどうなっていたのか。

 大きなポイントは、総会のプレゼン前に登壇した高円宮妃久子さま(60才)のスピーチだった。

 五輪はヨーロッパの歴史や伝統と深く結びついており、開催地決定の投票権を持つ約100人のIOC委員のうち、約1割が各国の王室メンバーといわれる。

「委員たちは各国のロイヤルファミリーに対して、敬意の念を強く持っています。もちろん、日本の皇族のかたがたへの尊敬の念も非常に強い」(五輪招致関係者)

 猪瀬直樹・東京都知事は、会見などで繰り返し期待を寄せてきた。

「英国ではエリザベス女王が(IOC関係者に)自らお会いし、マドリードではスペインのカルロス国王が(招致活動の)先頭に立っている。招致の大きな力になる」

「皇室がブエノスアイレスで存在感を示してくれることは重要」

 実際、今年3月に現地視察で来日したIOC評価委員が、皇太子さま(53才)に表敬訪問することが実現した。

「評価委員長のクレイグ・リーディー卿からして“サー”の称号を持っているかたですから。あくまで表敬訪問ですが、東京を印象づけられたとは思います」

 しかし、皇族の招致活動は憲法が禁じる「皇室の政治的行為」に抵触する恐れがあり、IOC総会参加まではなかなか踏み込めなかった。

 一方、7月のローザンヌでスペインのフェリペ皇太子が登壇すると、にわかにライバルのマドリードが勢いづいた。

「マドリードは早めに“切り札”を切ることで、確かに優位に立った。でも、私たちはマラソンでいえばトラックに入ってからの勝負になると信じていたので、焦りはありませんでした」(猪瀬氏)

 猪瀬氏は多くを語らないが、久子さまの総会参加に向け、猪瀬氏や首相官邸は宮内庁サイドとぎりぎりまで折衝を重ねたようだ。

 その甲斐あって、日本のプレゼンに先立って久子さまの登壇が実現した。純白のジャケットをお召しになり、東日本大震災への支援に対する感謝を、流暢なフランス語と英語で述べた気品あふれる姿に、多くのIOC委員は深く感銘を受け、東京にとって大いなる追い風となったことは間違いない。

「久子さまのご挨拶に続き、宮城・気仙沼出身の佐藤選手が病気や震災からの立ち直りとスポーツの力をアピールし、日本チームの“物語”に大きな流れができました。

 そこに旧皇族の竹田恆和(つねかず)・招致委員会理事長が公式に東京五輪を紹介して物語を発展させ、太田雄貴選手が元気よく盛り上げた。最後は安倍首相が政府のバックアップを約束するという、それぞれが役割を果たした最高の流れでした。東京ほど“ストーリー”が一貫していた都市はなかった」(猪瀬氏)

 終了後、壇上から降りる猪瀬氏に、仏頂面で知られるIOCのジャック・ロゲ会長は歩み寄り、「コングラチュレーション(おめでとう)」と小声でつぶやいた。

※女性セブン2013年10月24・31日号

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