中国の党・政府幹部の汚職や横領などの腐敗摘発は連日報道されているが、中国内では辺境地区である内モンゴル自治区で、司法や警察部門などを担当し、腐敗幹部を取り締まる立場にある最高幹部が私腹を肥やし、中国全土の5省に21か所もの不動産物件を所有し、4037万元(約6億5000万円)もの賄賂を得ていたことが分かった。この幹部は汚職では異例の執行猶予付きながら死刑判決を下された。
問題の幹部は同自治区の楊漢中・政法委員会書記。新華社電によると、楊は山西省の片田舎で生まれ、父は有名な石師だったが、楊が幼いころに死亡。家族は貧窮に喘いでいた。
文化大革命(1966~1976年)が終了した翌1977年、内モンゴル自治区に下放されていた楊は地元政府の奨学金などで内蒙古財貿学院に入学し、さらに天津商学院に進んだ。
卒業後、同自治区に戻り、満州里市長などを経て順調に昇進を重ねていくうちに、汚職にのめり込むようになっていった。
最初は数万元の賄賂から、次は数十万元、数百万元と額が上がっていき、最高で1回で1000万元(約1億6000万円)もの賄賂をもらうようになった。
これまでの賄賂は計49回で、19人の業者から4037万元のほか、米ドルで35万ドル(約3500万円)、4万豪ドル(約370万円)のほか、マンションなどの不動産物件21件をもらっていた。これほど多数の不動産物件を不正に取得したケースは極めて珍しい。
新華社によると、これは同自治区の賄賂額としては史上最高だという。しかも不動産物件は5省にまたがっており、地元の同自治区のほか、北京や広東省、山東省、海南省に分散している。
北京の物件は同自治区の空港に安全検査用の機器を導入する際、北京の業者の設備を採用した見返りだったという。他もほぼ同様の手口。愛人も数人囲っており、各地の不動産物件に住まわせていた。
これら巨額の賄賂にについて、新華社電は「楊はもともと貧困家庭の出身だったが、幹部になるについて、若いころの苦労を忘れ、人民に奉仕するという党幹部の精神をも忘れ去った。最初は少額だったが、感覚が麻痺し私欲を満たすことに走った。猶予刑ながら死刑判決は当然だ」と論評している。