元サッカー選手の前園真聖氏が酔っ払ってタクシーの運転手に暴行を働いた。誰もが非難する嵐の中で、前園氏に暖かい救いの手をさしのべたのは、被害に遭ったタクシー会社だった。「タクシー会社のコメントは大人力の宝石箱や!」と、大人力コラムニストの石原壮一郎氏が絶賛する。
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お酒を飲む人にとっては、けっして人ごとではありません。元サッカー日本代表MFの前園真聖氏が、10月13日に朝、酒に酔ってタクシー運転手に暴行を加えたとして逮捕されました。今回の事件で「ほほう」と唸らされたのが、被害を受けた運転手が所属するタクシー会社の責任者のコメント。タクシー会社側にとってはとんだ災難ですから、憤りをあらわにしたり、前園氏を激しく責めたりする選択肢もあったわけですが、一貫して穏やかな雰囲気の文面で、大人力にあふれた対応をしています。
まず最初に「本日、前園さんの代理人と所属事務所代表の方がお見えになり謝罪のお言葉をいただきました」と、きちんと素早い謝罪があったことを公表。さらに、前園氏本人からも謝罪したいという連絡がすぐにあったことも書いています。これは、前園氏が今回の事件で受けたダメージを回復する上で、ひじょうにやさしいアシストに他なりません。
コメントの中で、とくに大人力にあふれているのは、以下のくだりです。
「前園さんは今の日本のサッカー界を作られた方です。また現在は指導者として、たくさんの子供たちにも夢を与えるお立場にある方ですので、今回の事を教訓に、今後はお酒とは上手なお付き合いをされて、ますますご活躍されることを願っています」
自分の会社の社員が暴行を受け、世間的には「大悪党」の扱いを受けている加害者に対して、その功績を持ち上げ、現在の役割を評価し、あたたかいアドバイスや期待の言葉が述べられています。ひと言ひと言が美しい大人力に彩られていて、感動に打ち震えずにはいられません。会社名は現時点ではわかりませんが、いずれ明らかになり、そんなつもりじゃないでしょうけど、結果的に会社のイメージアップにつながることでしょう。
私たちも、この大人なコメントに大いに学びたいところ。酔っ払った同僚に暴言を吐かれたりビールをぶっかけられたりした場合、翌日に「ったく、とんでもないヤツだよ」と怒りをあらわにするのは、言ってみればもったいない反応です。慰めに来てくれた同僚に「○○は本当はとてもいいヤツで仕事もできるし、この会社にはなくてはならない存在だと思うんだ。それだけに、お酒と上手に付き合って、もっともっと活躍してもらいたいよね」てなことを言えば、あなたの株は一気に上がること請け合い。あるいは、本人にそういうふうに言ってあげたら、以後、あなたに対して頭が上がらなくなるでしょう。
自分を手ひどく振った女性や、向こうのミスで迷惑をかけられた得意先にも、同じ手法が使えます。意識してあえて寛大な態度を取ることは、自分の評価のアップにつながるだけでなく、怒りを抑える効能もあるはず。逆に、非難していい場面やちょっと強気に威張っていい場面で素直にそういう態度を取ると、人間の小ささを示してしまうことになります。目先の誘惑に負けず、大人の貪欲さでより大きな成果を目指しましょう。