肥満大国のイメージがあるアメリカだが、実際には知的階層によって差がある。ところが日本は健康への意識が高い人ほど、肥満の大敵、人工甘味料を摂取している。米ハーバード大学で研究員をしている大西睦子医師が、カロリーゼロ飲料の問題点について語る。
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アメリカ人の場合、いかにも添加物まみれの食事をしているようなイメージがありますが、実際には知的階層によって差があります。インテリジェンスの高い人たちは、ミネラルウォーターを飲みスポーツジムに通ってオーガニックな食品を食べていて、低知識層の人たちは、人工甘味料入りの飲み物とファストフードを食べているという印象です。
ところが、日本は逆で、なまじ健康への意識の高い人ほど、人工甘味料の飲食品を摂取しているようにも見えます。
また、アメリカに比べて日本は食品の宣伝、表現の規制が緩やかで、例えば実際の数値と違っても“ゼロ”と表現してもいいという問題もあります。
あるゼロカロリーゼリーの栄養成分を見てみると、100gあたり、熱量やたんぱく質、脂質についてはゼロが並んでいますが、続きを見ると、炭水化物7.6g、ナトリウム31mgとあります。完全なゼロではありません。実は日本の栄養表示基準では、100gあたりのカロリーが5kcal未満は「ゼロカロリー」や「ノンカロリー」と謳っていいことになっているのです。
また、「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」が違う、ということを知る人も少ないと思います。
「糖質」には、オリゴ糖やでんぷんなどの「多糖類」、麦芽糖やショ糖、乳糖などの「二糖類」、ぶどう糖や果糖などの「単糖類」が含まれます。一方、単に「糖類」というときには、単糖類と二糖類を指し、多糖類は含まれません。
ですから、第三のビールやソーダ飲料などで「糖類ゼロ」という表記の場合、ぶどう糖などは含まれていませんが、多糖類が含まれていたりするので、カロリーゼロではありません。
●大西睦子(おおにし・むつこ):医学博士。東京女子医科大学卒業後、国立がんセンター、東京大学医学部付属病院などを経て、現在ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究を進める。
※週刊ポスト2013年10月25日号