今や押しも押されもせぬ国民的人気アイドルグループとなったAKB48。2005年、約7000人の中から選ばれた20名の初期メンバーの中に、現在アパレルブランド『ANTIMINSS』の若き社長を務める川崎希さん(26才)はいた。
「軽い気持ちでオーディションに応募したら、あれよあれよと合格しちゃったんです。テレビ局で収録があったり、地方公演に行ったり。まわりは同世代の女の子たちなので、毎日が修学旅行みたいで楽しかったです」(川崎さん・以下「」内同)
とはいえ、この頃は今ほどの人気が出る前。お金の面でも相当苦労したそう。
「お給料はほんの少しで、交通費程度でした。当然贅沢もできなければ、気に入った服も買えなくて、やりくりしないと生きていけないくらい。それでも、私服イベントなどがあるので衣装はたくさん必要になるんです。毎回同じ格好でイベントに出るわけにはいきませんから、着た服を売って、それを元手に新しい服を買う、ということを自転車操業のように繰り返していましたね」
華やかな姿の裏に隠されたアイドルの苦労。洋服転売のコツは“できるだけ高く売れる服を買う”ことだという。
「人気雑誌に掲載されている服や、すぐに完売しちゃうブランドのものなど、とにかく人気があって、“欲しい”と思う人が多い服を選びました。同じデザインで色違いのものがあったら、店員さんに“よく売れてるのはどっち?”って聞いてみたり。たくさん売れているもののほうが、欲しいと思う人が多い分、高く売れますから」
自分の好みより、高く売れることを優先していたというのだから、なんとも涙ぐましい。
売るのはもっぱらインターネット上のアパレルショップ(注/「洋服買取」で検索すると、全国の買取会社が調べられる)で、買ってから1か月以内に売れば、ほとんど値下がりすることなく売り抜けたという。
「イベントで1回着ただけで、すぐに売りに出すこともよくありました。買った値段より高く売れたらラッキーでしたけど、世の中そんなに甘くはなかったです(笑い)」
社長となった今では、まとまったお金も持てるようになった。しかし、金銭感覚や癖は当時のままだという。
「無駄遣いはやっぱりできません。大きな買い物はできるようになりましたが、今でも服を買いに行くと“これ、高く売れそう”と考えてしまってることがありますね」
この先、さらに会社を大きくしていきたいと語る川崎さん。アイドル時代に学んだことは、社長業にも生きている。
「“1分でも遅刻したらクビ”という鉄則があって、実際に遅刻した子が次の日、姿を見せなくて。ほかにも帰宅後、固定電話から家に着いたことを報告したりと、学校では学べない社会のルールを徹底的に叩きこまれました。会社の従業員にも、時間にルーズな行動を取ったら容赦なく怒ります。遅刻してお客さんを待たせたりなんてもってのほか。ちょっとしたことで、簡単にお客さんは離れていってしまいますから」
26才ながら、さすが、社長としての哲学はしっかりしている。
※女性セブン2013年10月24・31日号