ドラマ『東京ラブストーリー』なら小田和正の『ラブストーリーは突然に』、『101回目のプロポーズ』ならCHAGE and ASKAの『SAY YES』――過去の人気ドラマは主題歌とセットで、多くの人の記憶に刻まれている。しかし、最近のヒットドラマですぐに主題歌を思い浮かべられる作品はいくつあるだろうか。『半沢直樹』や『あまちゃん』に至っては主題歌がない。10月スタートの連ドラでは主題歌がある作品がほとんどだが、今一度考えてみたい。連ドラに主題歌は必要なのだろうか? 音楽評論家の富澤一誠さんに聞いた。
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『ラブストーリーは突然に』、『SAY YES』をはじめとして、過去のドラマ、とくに1990年代の人気ドラマは内容と主題歌がリンクしていました。
登場人物にセリフで言わせるのではなく、シーン中に曲が流れることでその登場人物の気持ちを表現してくれてもいました。だから、曲によって登場人物の喜びや悲しみといった感情が増幅されたりする効果も生んだ。ある意味では、主題歌は脚本の中の“セリフ”のひとつだったんです。
だから、われわれが曲を聞いたときに、ドラマのシーンを思い出すことができ、逆にドラマを見たときに、曲を思い出すことができるのです。
当時はドラマのプロデューサーがレコード会社や歌手のところに脚本を持っていき、“この脚本に合う曲を書いてほしい”とオファーをしていました。だから、脚本と曲の内容がピタリと合っているんです。相乗効果が生まれるのも当然です。その結果、この時代、ドラマとのタイアップによって多くのヒット曲が生まれました。
それがやがて、テレビドラマの主題歌にすれば売れるということで、レコード会社が積極的にテレビ局に働きかけるようになった。テレビ局としても音楽に制作費をかける必要がなくなるというメリットがある。そして、極端な話、どんな曲でもいいからくっつけようということになってしまったんです。タイアップ乱発です。その結果、ドラマ用に作るのではなく、でき上がっている曲をドラマの主題歌にするケースも増えてきた。
すると、ドラマの視聴者にとっては“どうしてこのストーリーでこの曲なの?”“このシーンに合わないのでは?”という違和感が生じることも出てくるわけです。ドラマと関連性がない曲が主題歌になっているケースも目立ちました。もちろん、今でも必然性があるものはドラマと曲がリンクしているけれど、ビジネス的な狙いがあってタイアップにしました、というものはどうしても違和感がある。相乗効果も生まれません。
だから、今はドラマ発の主題歌がヒットしづらいのです。
そうなると、そもそも主題歌は必要ないのでは?という流れが少しずつ出てきたのが現在だと思います。
『あまちゃん』のオープニングテーマ曲も『半沢直樹』のテーマ曲も、歌詞はなくてもドラマの世界観と合っていましたよね。それはドラマの内容に合うように脚本を踏まえて、音楽家が制作した曲だからです。そこがブレていなければ、歌詞があるかどうかはそれほど重要ではないのです。『半沢直樹』は、テンポが速くて、次々に展開していくドラマだから演出上、曲だけのほうが緊張感が出て、歌詞が不要という面もあると思います。
結局、ドラマの内容にあった曲を作る。歌詞が必要なものはつけ、不要のものにはつけない。そういう当たり前のことが重要なのです。ドラマの主題歌も、今一度、原点に戻って作るべきということではないしょうか。