中日ドラゴンズの新監督に、谷繁元信選手(42)が就任した。過去に、捕手の選手兼任監督といえば、南海の野村克也氏、ヤクルトの古田敦也氏がいる。野村氏は優勝を果たしたが、古田氏は1年目こそAクラスだったものの、2年目は最下位に甘んじた。その違いは何だったのか。スポーツライターが解説する。
「大きいのはヘッドコーチの差でしょうね。南海では、野村氏自身が『すごく勉強になった』と認める、野球知識に長けたドン・ブレイザー(現役時代は二塁手)ヘッドコーチが参謀役でいました。野村とブレイザーは現役時代から野球についての議論を交わし、野村が唸るほどの知識があったといい、実質的にブレイザーが監督といってもいいほどでした。
一方、古田氏が監督に就任したときは投手出身の伊東昭光ヘッドコーチがいましたが、連携があまり上手く取れていなかったように思えます。特に攻撃面の戦術はほとんど自分だけで考えないといけなかった状態でしたし、必然的に自身の出場機会も激減。ケガもあったとはいえ、監督をしたことで選手寿命が縮まったといえるでしょう」
野村氏、古田氏の例からも、谷繁兼任監督の成功は、周りを固めるコーチ陣にかかっているという。
「年上のコーチで、選手時代に谷繁監督以上の実績を残し、指導者としても経験値の高い人を招聘できるかが、鍵になるでしょう。もちろん、落合博満ゼネラルマネージャー(GM)は当然そのようなコーチを連れてくるはずです。
古田氏の場合、年上コーチも半分いましたが、誰も現役時代の実績で古田氏に勝てる者はいなかった。野球界において、指導者と選手時代の実績は関係ないと言いますが、本人たちはけっこう気にするものなんですよ。そういう意味で、古田氏に直言できるコーチはほとんどいなかったように思えます。
逆に、古田氏が全幅の信頼を置けるコーチもいなかった。そういう意味では、谷繁監督にとって、今回ヘッドコーチ就任が予想される森繁和氏はセーブ王に輝く経験を持つなど、どちらの要素も兼ね備えている。そのうえに、さらに後ろには落合GMが控えていますから、安心感は大きいでしょうね」(同前)
谷繁兼任監督の負担をコーチ陣が軽減しなければ、チームとして機能することは難しい。
「投手交代は、谷繁兼任監督に相談しながらも、森氏が決める流れになるはず。2年前も、森コーチが谷繁捕手に『この投手はまだ行けるか?』と聞くことも多々ありましたから、そのときと同じですね。
問題は攻撃面の作戦をどうするか。これは野手出身のコーチ陣がカバーしなければならない。落合GMが監督時代に見込んだ辻発彦氏などがコーチとして返り咲き、中心となるのではないでしょうか。谷繁監督より年上ばかりの内閣が誕生すると思います」(同前)