コーヒーショップでカフェラテを頼むとき、ミルクを豆乳に代えるオプションは今や当たり前。ミルクとは違った味わいに、別メニューとして楽しむ人も少なくない。その豆乳が、第3次ブームを迎えている。昨年の生産量は過去最大の25万5,905キロリットルで4年連続伸長した。今年も前年を上回るペースで伸びており、最大生産量を更新するのは間違いなさそうだ。
日本豆乳協会の吉澤兄一さんによれば、今回のブームは前回、前々回とは性質が違うという。
「1983年の第1次、2005年の第2次ブームは健康によいとメディアがさかんにとりあげた影響が大きかったのですが、取り上げられる機会が減るとブームも去りました。今回は、メーカー各社が豆乳のおいしさ開発に注力し、今まで豆乳を飲んだことがない人にも手にとってもらいやすいように果汁やフレーバーを加味した新商品が次々生まれたこと、それにあわせて量販店の棚替えを戦略化、営業を活発にしたことが大きく影響しています」
昨年、過去最大の生産量を記録したなかでも前年に比べて154%と大きな伸びを見せているのが、果汁入りの豆乳飲料だ。いちごやバナナなどの定番だけでなく、ゆずやグレープフルーツ、マンゴー、ぶどうにメロンなどが並ぶ。果汁入り以外にも抹茶、コーヒーやおしるこ、ごまなど小腹がすいたときのおやつ代わりになりそうなカフェタイムを意識した商品も豊富だ。
「毎年9月のスーパーマーケットが棚替えするタイミングで登場する新商品が、その年の豆乳の消費者市場増減に大きく影響します。昨年はマンゴーや白桃など多くの果汁入り新商品が登場しました。それらが消費者の嗜好を得たことが大きく、続けて飲んでもらえているのでしょう」(前出・吉澤さん)
キッコーマン飲料の調査によれば、一度でも豆乳を飲んだことがある人は今や90%をこえ、月に一度以上豆乳を飲む人は約60%、そのうち10%強が、その年に初めて豆乳を飲むようになった人だという。豆乳を愛飲する人は増えているが、2012年の生産量から換算すると、日本は国民一人あたり年間約2リットルで、今後は4~5リットルまで増えると見込まれている。
豆乳の年間一人あたり消費量が、アジアのなかではタイ(10.2リットル)、韓国(5.2リットル)、台湾(4.7リットル)やマレーシア(4.4リットル)に比べると、かなり少ないからだ。
1983年の第1次ブームのときは、豆乳独特のくさみが強い製品がまだ多く、試してみたが続けて飲むのをやめてしまった人が多かった。
2005年の第2次ブームは、イソフラボンが健康や美容によい食べ物であるとテレビ番組などがさかんに取り上げ、特に豆乳は直接摂取できると強調されたことがきっかけで起きた。このとき、生産量は初めて20万キロリットルを超えたが、メディアが取り上げるのをやめると需要は激減した。「発信情報過多でバブルになった反動で、市場どん底期でした」(前出・吉澤さん)という。
地道な商品開発と営業努力の末にやってきた第3次豆乳ブームは、まだしばらく続きそうだ。