一昨年まで中日ドラゴンズの監督を務めた落合博満氏(59)が、球団GMに就任した。この人事に戦々恐々としているプロ野球関係者は少なくない。この男が再び監督の座に就くのではなく、「GM」という権限にこだわったところにその恐怖の源泉はある。
「落合はチームの采配や編成よりもっと大きなところを見ているはず」と、ある日本野球機構(NPB)関係者はいう。
「落合はプロ野球界の構造改革を断行せよと公言してはばからない人物です。それも決して“口だけ”ではなく現役時代から野球協約を精読し、その詳細から問題点に至るまで全てを熟知している。既得権益に固執する“お役所体質”のNPBにとって、煙たい相手であることは間違いない。一方で現状に閉塞感を抱いている改革派からは、期待を一身に集めている」
NPB関係者が怖れるのも無理はない。落合氏は、現在のプロ野球界を根底から覆し兼ねない爆弾提言を連発してきたからだ。それは週末から始まる日本シリーズにも「冷や水」を浴びせかねない内容だ。
「最近、“(勝率が)5割を切った球団がクライマックスシリーズ(CS)に出てきたら格好つかないよな”と言い始める人が(NPB内に)いっぱい出てきたんです。でも、お前らがそのルールを作ったんだろ」(2013年7月、東京での講演会)
これだけなら、多くのプロ野球ファンが抱えるプレーオフの問題点を代弁したに過ぎない。しかし、落合氏は批判だけでなく具体的な代替案も提示している。
「セ・リーグとパ・リーグってものをなくしてやろうという発想なんです。1リーグ制にし、12球団を予備抽選、本抽選によって3つのグループに振り分ける」
落合プランの1リーグ制では、12球団総当たりで12回戦、または13回戦を戦う。ポストシーズンには、各グループの優勝チームが進出。その3チームに勝率順で順位を付け、勝率1位の球団が、3チームの次に勝率の高い、メジャーリーグでいう“ワイルドカード”のチームと対戦する。その勝者どうしが日本一を決める。メジャーリーグのシステムに非常に近いものといえるだろう。
確かに、落合氏のプランは、現在のCSの不条理を解決する有力なアイディアである。しかし、もしこれが実現すれば、大きな不利益を生じる球団が出てくることも事実だ。
「CSがあることによって、Aクラス入りを争う下位チームの対戦がシーズン終盤まで一定以上の集客を確保しているという現状がある。もし“落合プラン”が実現すれば、強い人気球団と弱い球団の格差が今以上に広がる可能性がある。
また、集客の期待できる巨人との対戦が減ることから、セ・リーグの各チームから猛反発が出ることは必至。現状の交流戦でも、セからは“試合数を減らせ”との声が上がっているくらいですからね」(プロ野球関係者)
※週刊ポスト2013年11月1日号