今年のセリーグを盛り上げた広島東洋カープ。16年ぶりにAクラス入りし、CSでも話題を集めた。新生カープ、果たして何が変わったのか。
今季はエースのマエケン(前田健太)15勝、野村12勝、大竹10勝、バリントン11勝、と先発4本柱が二桁勝利をあげた。これは北別府学、川口和久、長冨浩志、金石昭人を擁した1986年以来のことだった。
その北別府氏にして、「私たちの時代は先発ローテーションが4、5人いて、名前がある投手でもうかうかできなかった。まだ私たちの頃には及ばないけど、いい形にはなってきたね」と投手陣に太鼓判を押す。
カープは1975年の初優勝から1991年までの17年間で優勝6回を果たしたが、その黄金期最強時代を投手コーチとして支えた広島OB・安仁屋宗八氏は、「まるで津田が乗り移ったようなピッチングをしてるんだよね」と語った。
炎のストッパー、津田恒実。投げた球種の9割以上が直球という伝説の剛腕だ。1991年、シーズン序盤の4月に脳腫瘍が発覚して戦線離脱。それを知った広島ナインが「津田を優勝旅行に連れて行ってやろう」と涙ながらに誓い、同年のリーグ優勝を実現したのはファンの間に今も語り継がれる。闘病のかいなく32歳で早逝。
「津田の死後、あいつの座右の銘である“弱気は最大の敵”“一球入魂”という言葉を投手の帽子のひさしにかかせた」と安仁屋氏はいう。今回のCS、マエケンが阪神・巨人の強打者に真っ向勝負する姿を目の当たりにして、その魂は今の現役にも引き継がれている、と実感したという。
魂のプレーを見せたのは投手だけではない。得点はとれなくても、全員野球で1点を守る広島ナインの姿は鬼気迫るものがあった。
※週刊ポスト2013年11月1日号