さながら迷い猫ならぬ“迷いけん銃”といったところか。今月9日、神戸地検の掲示板に、こんな公告が貼り出された。
押収したけん銃1丁、実弾22発を返却するので、所有者は所定の期間内に請求しなさい──。
なんとも物騒な内容だが、これは、押収物還付という制度によるもの。たとえば、事件捜査の押収物を容疑者が「自分の物ではない」と否定した場合、他に持ち主がいることになり返却しなければならない。
「国が勝手に処分すると、憲法上の財産権を侵害することになるので、還付公告の手続きをとります」(元検事の若狭勝弁護士)
公告から6か月を過ぎても持ち主が現われなければ処分される。だから、返却リストに載るのはけん銃だけではない。他の地検の公告を見ると、「覚せい剤1.9kg」「偽造住民基本台帳カード」から「つまようじ3本」「煙草の吸い殻」なんてものもある。
しかし、けん銃などの違法品を、本当に返してもらえるのか。
「名乗り出れば返却されますが、その時点で現行犯逮捕されます。だから違法なものは100%近く名乗り出ないでしょう」(同前)
撮影■ウエスト
※週刊ポスト2013年11月1日号