お目当ての選手が出て大喜びしたり、ダブってがっかりしたり……「プロ野球カード」で一喜一憂した少年時代が、実に懐かしい。カルビーの『プロ野球チップス』が、1973年の発売開始から今年で40年を迎えた。商品はどのように誕生したのか。現在、カード制作を担当する同社マーケティング本部ポテトチップス事業部の三井剛氏が明かす。
「きっかけは1971年に発売した、おまけカード付きの『仮面ライダースナック』が社会現象になるほどヒットしたことです。その販売が終了し、“カードとスナック”というノウハウを生かした新商品を模索した結果、当時人気絶頂だったプロ野球しかない、という結論に至って商品化されました」
発売当時、中のお菓子はポテトチップスではなくサッポロポテト。そのため『プロ野球スナック』の名で記憶する人も多いだろう。記念すべき最初のパッケージに描かれている一本足打法の選手は、もちろん“世界のホームラン王”……ではないらしい。“大人の事情”から、「あくまで似ている人」(三井氏)とのことだった。
値段は20円。〈ジャイアンツ他選手カード〉の文字があり、巨人人気の全盛期だったことがわかる。かつて同社でカード制作を担当した、カードライターのしゅりんぷ池田氏が語る。
「売り上げは巨人の成績に左右されました。40年間で最も売れたのが、長嶋監督が初優勝した1976年。その次が王監督で初優勝した1987年でした」
1980年代には中身がポテトチップスに変わる。1990年代に入り、Jリーグの発足などで野球人気が低迷、それに合わせて売り上げも低迷し、苦戦が続いた。しかし2000年代の「食玩ブーム」で人気が復活して、現在に至る。この間、値段は何度か変更されたが、現在はカード2枚入りで90円となっている。
これほどの超ロングセラーだけに、カルビーの主力商品と位置づけられているかと思いきや、
「実はそうでもないんです。利益率も売り上げも、カルビーの中では最低ランク。いつ製造中止になってもおかしくない商品です。私が担当していたのは1990年代前半ですが、担当は私1人。しかも入社2年目の若造でしたからね」
池田氏はこういって笑う。
「でも子供たちをカルビーのファンにして、カルビーのブランドイメージを高めるのが『プロ野球チップス』の役割だと、先輩から教えられました」
※週刊ポスト2013年11月1日号