26日から始まるプロ野球日本シリーズ。初進出の楽天イーグルスは田中将大、外国人だけじゃない! 初年度から同球団を取材しているノンフィクション・ライターの神田憲行氏がお勧めの三選手を挙げた。
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楽天に取材に行くと、担当記者から「この二人には会っておいた方がいいよ」と勧められる選手がいる。
斎藤隆投手と二塁手の藤田一也選手だ。
斎藤(43歳)はメジャーのダイヤモンド・バックスから今季、8年ぶりに日本球界に復帰した。穏やかな人柄が選手たちの精神的柱になっている。
「斎藤は楽天に入団が決まったとき、職員ひとりひとりに『これからお世話になります、斎藤隆と申します』と挨拶して回ったそうです。メジャーまで経験してあんなに腰の低い人はいない」(担当記者)
9月26日、西武ドームでレギュラーシーズンの優勝を決めた直後、選手を取材するため通路の両側に並ぶ記者たちの中を斎藤が歩いていた。だが途中で「あっ」と、引き返す。忘れ物?と思っていたら、斎藤が記者の列の先頭まで戻り、両手を広げた。
「じゃみなさん、ハイタッチで!」
優勝の喜びを報道陣とも分かち合おうという斎藤の配慮だった。その手のひらは大きく、意外と柔らかだった。大きな人だな、と思った。
藤田(31歳)は昨季途中、横浜DeNAよりトレードで移籍してきた。守備力に定評があり、星野監督も「あの守備のお陰で田中は5勝ぐらいしているんじゃないか」というほど。
見所はランナーが一塁にいて、二塁ベース脇に打球が飛んだとき。藤田はゴロを取ってそのまま二塁ベースに入り、一塁走者のスライディングをかわすためジャンプ、一塁に送球して「ひとりダブルプレー」を完成する。このジャンプが、まるで空中に階段があるかのように駆け上がるのだ。私はエアージョーダンをもじって「エアー藤田」と密かに呼んでいる。
人柄も良く、ファンにサインもよくする。試合後の囲み取材を終えたあと、記者に「ありがとうございます」と頭を下げるプロ野球選手に初めて会った気がする。
この二人に加えて、ショートでキャプテンの松井稼頭央(38歳)の働きも目が離せない。
今季レギュラーシーズンの成績、打率.248、本塁打11本は往時の彼の成績を知るものからすれば寂しく思うかもしれない。
しかしここぞというときの1本、守備は輝きを失っていない。クライマックスシリーズの第3戦の2回、松井はこのシリーズ初めての安打を放つと、次の嶋の左翼線を破る二塁打で一塁から一挙に生還した。今季の盗塁数はわずかに1個でも、ベースランニングの技術、捕手里崎のブロックを見て股間から本塁ベースに手を伸ばした判断力、松井の輝きは失われていない。ふだんのアベレージは低くても、「ここぞ」という試合では大きなプレーが出る。私は松井を見ていて、「一流のベテラン」とはどうあるべきか、考えさせられた。
26日土曜日から始まる巨人との日本シリーズでは、ぜひこの3選手にも注目してほしい。