ネットやテレビで人気の通信販売は、18世紀にアメリカで始まったとされる。この“通販”という様式が広まったのも、広大な国土を持つアメリカならではだろう。
商品を紹介する媒体はカタログから、ラジオ、テレビへと変遷を重ねたが、商品が簡単に手に入らない地方に向けて、メディアで商品情報を発信し、オーダーを受けて配送するというシステムができ上がった。
日本では1970年、フジテレビの生活情報番組『東京ホームジョッキー』の中の1コーナーとしてテレビ通販は始まった。
「第1回目の商品はメキシコ製のインテリアランプだったそうです。このコーナーが大人気となり、その後通販の専門会社として独立したのが今日のディノスですね」(通販ベンダー会社・アペックス社長で通販コンサルタントの芳子ビューエルさん)
家で買い物ができるこのシステムは、買い物の姿を大きく変えた。成功を受けて、翌年にかけてキー局がテレビ通販事業に次々に参入。当時扱っていた品物は、三越や高島屋といった有名百貨店の商品。百貨店ブランドの信用と高級イメージがアピールされた。
1970年代後半になると、活況を呈する市場に独立系通販会社と呼ばれる「総通(日本直販)」や「日本文化センター」といった企業が次々参入。このころから、続々とテレビ通販からヒット商品が生まれる。
「小学生のころ、家でも手軽に運動ができると母親が『ぶら下がり健康器』をテレビ通販で買っていました。どこの家にもありましたよね」(40代専業主婦)
「健康とかダイエット、美容という言葉に弱くてね。電気の振動で気泡が出てくる洗顔器が人気というので買ったの。それでよく顔を洗っていました(笑い)」(60代無職女性)
美容や健康を前面に押し出した商品は、女性たちの心を次々にとらえていった。テレビ通販の注目度がさらに高まったのは、1979年に大規模小売店舗法(2000年廃止)が改正され、出店規制が強化されてからだ。
「そのため、店舗を持たなくても販売できる通販事業に関心が高まったのでしょう。
しかし1980年代に入ると、限られたテレビ通販放送枠の争奪戦が始まり、バブル経済もあいまって経費が高騰するようになりました」(前出・ビューエルさん)
そして1990年代初頭、バブル崩壊とその後の不況でテレビ通販市場もいったん縮小していく。
※女性セブン2013年11月7日号