日本の70代の運動能力が、調査を開始してから過去最高を記録したと文部科学省が「2012年度体力・運動能力調査」の結果を発表して話題になっている。逆に30代と40代の体力は下り坂で、30年後に彼らが70代になったとき、今の70代ほど長い健康寿命(寝たきりにならず自立して生活できる期間)は保てないおそれがある。
体力調査の結果の通り元気な老人が多く平均寿命が女性で86歳、男性で79歳と世界有数の長寿国・日本だが、健康寿命は現在でも男性で9.22歳、女性では12.77歳も寿命より短い(平成22年厚生労働省調べ)。体力が落ちている今の30代、40代が高齢者になったとき、この差はもっと広がってゆくかもしれない。この現状に、東京大学医学部客員研究員の山田恵子さんは警鐘を鳴らす。
「要介護認定を受ける人の5人に1人は、骨や関節などの“運動器”の障害が理由となっています。骨や関節、体を動かすための運動器の障害によって介護が必要になったり、寝たきりになる状態を、ロコモティブシンドローム、略して“ロコモ”といいます。2007年に、日本整形外科学会が、日本の未来を憂慮して提唱しました。ロコモ対策は、症状が出る前の40代から始めたいもの。具体的には、運動とバランスのよい食事を心掛けることです」
ロコモの3大原因と呼ばれる病気には、骨粗鬆症、変形性膝関節症、脊柱管狭窄症があるが、この中で骨粗鬆症は、栄養の摂り方によって予防ができるという。
「ロコモ予防のために摂り入れたい栄養素としては、たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどが挙げられます。いずれも骨づくりに必要な栄養素です」と話すのは、女子栄養大学教授の上西一弘さん。
「たんぱく質やカルシウムは、牛乳・乳製品、魚類、納豆などの大豆製品、緑黄色野菜などに豊富に含まれています。特に牛乳は、カルシウムの吸収率が良いのが特徴。私たちの研究では、牛乳のカルシウムの吸収率は約40%、小魚で33%、野菜は19%でした。ですから、1日に牛乳200ml、ヨーグルト約200g、スライスチーズ1枚を摂取するのが、ロコモ対策には理想的です。
また、牛乳のたんぱく質の中から発見された『MBP(ミルク・ベーシック・プロテイン)』もおすすめです。これは、骨を壊す働きを抑えて、骨をつくる働きを促進させる注目の成分。MBPも牛乳に含まれているので、まずは、牛乳を意識して飲むように心がけるとよいでしょう」
最後に、骨や筋肉の維持に必要な牛乳たっぷり“ロコモ”対策レシピを2つ紹介しよう。
■ミルクきな粉もち(2人分)
(1)鍋に牛乳200ml、片栗粉大さじ3、砂糖大さじ1.5を入れてよく混ぜ、中火にかける。かき混ぜながら煮る。
(2)煮立ったら弱火にし、かき混ぜながらとろみがつくまで煮る。
(3)水でぬらしたパットに移して冷ましたら、一口大に取り分けて皿に盛り、きな粉大さじ4と黒蜜大さじ2をかける。
【栄養ポイント】牛乳ときな粉は相性バッチリ! 一緒に食べると、骨づくりに必要なカルシウムとマグネシウム、ミネラルがバランスよく摂れる。
■小松菜とバナナのスムージー
(1)バナナ1本(約150g)は1cmの厚さに切り、ラップに包んで冷凍しておく。
(2)小松菜2株(約80g)は1cm幅に切る。
(3)1を冷凍庫から出して2~3分おき、飾り用に4切れ残して、残りを小松菜、レモン汁大さじ1、はちみつ大さじ2、牛乳150mlとともにミキサーにかける。
(4)グラスに注ぎ、バナナとあればミントの葉少々を飾る。
【栄養ポイント】牛乳×小松菜×バナナは、骨を丈夫にするカルシウム、ビタミンK、マグネシウムが一度に摂れる理想的な組み合わせ。毎日コツコツ続けて。