高木守道・前中日ドラゴンズ監督は、前任の落合博満氏がファンやマスコミへのサービスが悪いと評判がたったことを憂慮して、さまざまな形で高木流のサービスに尽くした。責任を取り辞任した高木守道・前監督に、球界の大先輩・金田正一氏が聞き手となり、名古屋で「敗軍の将」を直撃した。
──それにしても、ベンチでは怒ってばかりいたな。
高木:正直この2年間は、カッカし通しでしたね。特にコーチは叱りっぱなしでしたから、大変だったと思います。カッカしすぎて、マスコミにもあれこれいいすぎました。試合後の談話も出さず、ファンサービスもしない前任者(落合監督)が問題になったこともあって、多少はリップサービスもしないと、という気持ちがありましたから。
──しかし、もともと多弁ではないだろう。
高木:私は現役時代から無口で“むっつり右門”といわれたほど。引退後にテレビの仕事をしていた時も「一番喋らない解説者」といわれました。アナウンサーが「ファインプレー!」と叫んでも、私からすればほとんどが普通に捕れる球だから「普通です」といって放送席を盛り下げていた。これではいかんと思い、アナウンサーに合わせて喋るようにするうちに、余計なことまで喋るようになってしまったんです。
それにこんな年齢で監督にしてもらったのだから少しはサービスしないと、という思いもありました。いい親父ギャグも炸裂していたと思ったんですが、なかなかウケませんでしたね。
──そういえば、いくつになったんだ?
高木:72です。パープレーですよ(とドヤ顔を見せるが、取材会場に数秒の沈黙が流れる)。
──うん……、いい親父ギャグ……そうだな、うん。ところで就任当初はファンサービスも頑張っていたな。
高木:サービスのつもりで、キャンプでは野球そっちのけでサインしていたら、チームがダメになっちゃいましたね(苦笑)。
ただ、ファンサービスと簡単にいうけど、選手や現場にできることなんて、せいぜい球場へ来る観客にサインで応じるくらい。でもそれで喜ぶのは、来ている人だけだし、喜ぶのは1回や2回だけなんです。結局、この選手のこのプレーを見たいというのを作って強くしないと、お客さんは高い入場料を払って来てくれないんですよ。リップサービスしたつもりが、変な方向で報道されたこともあったし、ファンサービスは難しかったです。
※週刊ポスト2013年11月8・15日号