「アミーユ」「レストヴィラ」「グランダ」「ラ・ナシカ」「リアン」「エスペランサ」……。老人ホームの入居を検討する人であれば、全国にこうしたオシャレなカタカナ語が冠されたホームがたくさんあることにお気づきだろう。
高齢化社会の到来を商機と捉え、2000年頃から民間業者が雪崩を打ったように老人ホーム経営に乗り出した。有料老人ホーム数は昨年、7500か所を突破し、さらに数は増え続けている。
近年は、本業は他業種でも資本力のある企業が中小のホーム運営会社を買収したり、新規ホームを次々に建設するなど、寡占化も進む。中には、介護付き居室だけで1万部屋を超える大手グループも現われている。
事業者は、熾烈化する介護施設ビジネスで勝ち残るために、価格帯やサービスの質などで他社との差別化を図っている。そうした独自の「売り」をアピールするために、共通の特徴を持ったホームを、冒頭のカタカナ語のように同じ名前で売り出すようになった。それらは老人ホーム業界で「ブランド」と呼ばれている。
たとえば、ホテル業界を見ると、その名称を見れば、そこが「外資系高級シティホテル」なのか、「格安ビジネスホテル」なのか、おおよそ見当がつく。だが、老人ホームの場合は認知度が低いので、ブランド名だけでは、どういう特徴のホームなのかわからないだろう。
調べると、全国に5つ以上のホームを持つブランドが相当な数で存在することがわかる。中には100施設を超える数を有するブランドもある。
また、月額費用は「ヒルデモア」や「アリア」など高いブランドで70万円以上、「サニーライフ」や「アミーユ」など安いブランドで15万円未満と、かなりの価格差がある。それだけ入居希望者のニーズが幅広いことを示しているが、何がその価格差を生むのだろうか。
タムラプランニング&オペレーティング代表の田村明孝氏が分析する。
「まず価格が高いホームは、入居者1人に対する職員数が多く、人員配置が手厚い傾向があります。また、食事などのサービスの質が高く、豪華な居室や共用部分があるなどハード面の付加価値も反映されています。一方、あまりにも価格が安すぎるホームは、何らかのサービスが削られていると考えられます。
ただし、単純に“高かろう、良かろう”というわけではありません。低額であっても高いレベルのケアを提供するところはあります。大切なことは、今までの自分の生活レベルに合っていて、ホームに移り住んでも無理のない暮らしができるかということです。価格の高低にかかわらず、必ず体験入居をして、自分に合ったホームかどうかを確認してください」
※週刊ポスト2013年11月8・15日号