NHK『きょうの料理』『あさイチ』で人気の“ばぁば”こと料理研究家・鈴木登紀子さん(89才)が、日本料理におけるお酒の効果を解説します。
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朝晩の冷え込みが厳しくなりましたね。紅葉が美しい季節の到来。昔はたびたび、じぃじと京都や金沢を訪れ、燃え盛るような紅葉を愛で、大好きな器を探し、おいしいお料理をいただく旅を楽しみました。暮らしの中から四季が失われつつある昨今ですが、旅に出ますと、“旬”の愉しみがそこここにございます。ときには日常を離れ、あえてよそ者となって、その土地の自然や情景に身をおくことも、大切でございますわね。心のリセットになります。
ところで、この季節になりますと、お魚がおいしくなってまいります。お酒を楽しむ機会も増えますわね。私はお酒をたしなみませんが、娘たちに言わせますと、飲みすぎなければ、お酒は心身を活性化してくれる良薬なのだそうです(笑い)。
じつは日本料理におきましても、日本酒はお魚やお肉のうまみを引き出し、活性化してくれる、大変結構な調味料なのです。
お魚やお肉のクセをやわらげてくれますから、下味には欠かせません。お野菜も、たとえばきのこ類にひとふりしますと、香りも風味も格段に上がります。
また、イクラやたらこなど、塩気のきついものを日本酒で洗いますと、味が穏やかになり、風味も加わって一石二鳥。
それから、焼きもの、とくにさばやあじなどの青魚にも日本酒をひと塗りして焼きますと、口あたりが軽やかになりますし、魚の煮ものに使えば、よい照りもつきます。
※女性セブン2013年11月14日号